研究課題
超低温粉砕(液体窒素中でのビーズ粉砕)を製薬産業における実際の製品開発に利用できる粉砕技術として提示することを研究目標とし,ビーズの摩耗により生ずる製品への異物混入の対策に取り組んだ。ビーズ素材として,常温・常圧下で昇華するドライアイス(固体二酸化炭素)を採用した.市販の円柱形ドライアイスペレットを液体窒素中に浸漬することで、自己破壊的に球形顆粒へと形状変換することを見い出し,粒状ドライアイス(ドライアイスビーズ)の取得方法を確立した.また最終年度では,別の粉砕系として,マンニトール及び結晶セルロースから成る市販の球形粒(Nonpareil,Cerphere)を粉砕ビーズとして採用した.いずれのビーズにおいても難溶性モデル医薬品として適用したフェニトイン,イブプロフェン,フェキソフェナジン塩酸塩のいずれもが,サブミクロン~シングルミクロンサイズに微粉砕できる粉砕条件を見出した.特に添加剤ビーズによる粉砕では,医薬品粒子と添加剤ビーズの応力下での粘弾・破断特性を評価し,特殊ビーズによる超低温粉砕機構を明らかにした.総括すると,ドライアイスビーズによる粉砕では,粉砕工程後,ビーズが昇華して消失するため完全なコンタミレス粉砕を提示し,添加剤ビーズによる粉砕では製品に混入するものの取り込まれても問題とならないビーズイン粉砕系を提示した言える.また分散媒の液体窒素は,粉砕工程後に自発的に揮発するため,乾燥工程を必要としない省エネルギー型工程である.サブミクロンサイズの粉砕品は水相中での溶解性が劇的に改善されることから,近年の創薬活動で課題となっている難溶性医薬品候補化合物の製剤設計として有力な製剤化技術を確立することができた.こうして本研究で提示したコンタミレス超低温粉砕が,医薬品産業での利用価値があることを明示した.
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