研究課題/領域番号 |
17K08258
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
奥田 知将 名城大学, 薬学部, 准教授 (20513857)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / 吸入粉末剤 / 再分散 / 粉末微粒子設計 / 肺内デリバリー / 噴霧急速凍結乾燥法 |
研究実績の概要 |
今年度には、ナノ粒子の表面修飾による再分散性の向上を試みるとともに、ナノ粒子を含有した噴霧急速凍結乾燥 (SFD)微粒子を培養細胞に曝露した際のナノ粒子の膜透過性・細胞毒性、またナノ粒子分散液をマウスに肺内投与した際の肺内動態について評価を行った。 ナノ粒子の再分散に適した表面修飾剤を探索したところ、特にポリエチレングリコール (PEG)誘導体が有用であることを見出した。これまでに良好な再分散性が得られた数種のナノ粒子含有SFD微粒子を用いて加湿前後の結晶性とナノ粒子の再分散性を評価・比較した結果、加湿後にSFD微粒子の賦形剤成分が非晶質から結晶質へと転移するとともにナノ粒子の再分散性を消失したことから、ナノ粒子の再分散性の獲得において賦形剤の非晶質状態が重要である可能性が窺えた。 ナノ粒子の膜透過性に及ぼす曝露状態の影響 (粉末微粒子と分散液の違い)について検証したところ、PEG修飾ナノ粒子では粉末微粒子として曝露した方が顕著に高い膜透過性を示したのに対し、未修飾ナノ粒子ではこのような違いは認められなかった。PEG修飾ナノ粒子は未修飾ナノ粒子よりも高い細胞毒性を示したが、PEG誘導体の脂溶性部分の化学構造を変えることで、ナノ粒子の良好な再分散性を維持しつつ細胞毒性を軽減できることを見出した。 肺内動態の評価において、肺内に到達したナノ粒子は気道上皮細胞上から速やかに肺組織へと移行した後に、肺組織内で長時間に渡り滞留し、全身循環への移行はほとんど認められなかった。ナノ粒子の粒子径が増大するにつれて肺胞マクロファージへの移行性が高まる傾向が見られたが、上記の動態特性については、ナノ粒子の粒子径およびカルボキシル基・アミノ基の化学修飾による明確な違いが認められなかった。一方、PEG修飾ナノ粒子については、気道上皮細胞上から肺組織への移行が遅延する傾向を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度には当初の研究実施計画どおり、『ナノ粒子のin vitro細胞内取り込み・細胞毒性 (マイクロプレート)』『ナノ粒子のin vitro膜透過性・細胞毒性 (細胞単培養系、トランスウェル)』『ナノ粒子のin vivo肺内動態・肺障害性』の計3項目に着手し、それぞれ未だ完結できていないものの部分的に成果を残すことができた。但し、細胞培養ならびに評価系の確立が計画していた様には順調にいかず、培養細胞を用いた研究を十分に進めることができなかった。また、当初の計画以上の成果として、PEG誘導体によるナノ粒子の表面修飾の有用性を明らかにするとともに、SFD微粒子の賦形剤成分の結晶性とナノ粒子の再分散性との関係性を新たに見出すことができた。 以上の点から判断した。
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今後の研究の推進方策 |
上記の進捗状況の項で記載の内容のうち、未だ着手できていないものを優先して研究を進めていく。具体的には、『ナノ粒子のin vitro細胞内取り込み・細胞毒性 (マイクロプレート)』において細胞内取り込み評価、『ナノ粒子のin vitro膜透過性・細胞毒性 (細胞単培養系、トランスウェル)』においてナノ粒子間 (未修飾・カルボキシル基修飾・アミノ基修飾・PEG修飾)の比較、『ナノ粒子のin vivo肺内動態・肺障害性』において粉末微粒子と分散液の比較をそれぞれ行う。 その後、当初の研究実施計画どおり、『ナノ粒子のin vitro膜透過性・細胞毒性(細胞共培養系、トランスウェル)』の評価を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度よりも次年度に配分した経費が少なく、また本年度中に完結できなかった研究内容も多いため、次年度の研究消耗品(細胞培養品・実験動物など)の購入に充てる方がより円滑に研究を実施できると判断したため。
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