今年度には、官能基およびポリエチレングリコール (PEG)誘導体で修飾した種々のナノ粒子 (NP)を含有する噴霧急速凍結乾燥 (SFD)微粒子について、気液界面培養細胞層上に分散添加した際の細胞層滞留性・透過性およびマウスに肺内投与した際の肺内動態・障害性を評価・比較した。 培養細胞層での透過実験の結果に関して、脂溶性部分がコレステロールおよびリン脂質から成るPEG誘導体を用いた両PEG修飾NPともに、分散液と比べてSFD微粒子として添加した場合により高い滞留性・透過性を示したが、前者のPEG誘導体を用いた場合でのみ細胞毒性に起因すると考えられる膜抵抗値の低下が認められた。アミノ基修飾NPにおいては、膜抵抗値の低下を認めることなく未修飾NPおよびPEG修飾NPよりも顕著に高い透過性を示し、上記と同様にSFD微粒子として添加した場合に透過性がさらに亢進した。このようなSFD微粒子添加によるNPの滞留性・透過性の亢進は、透過実験時の温度を下げることで抑制されたことから、エンドサイトーシスおよびトランスサイトーシスが一部関与していることが示唆された。 マウスでの動態試験の結果に関して、未修飾NPと異なりPEG修飾NPでは、SFD微粒子として投与した場合でも肺胞マクロファージへの移行量が少なく、水中再分散性の向上による効果が示唆された。特に、脂溶性部分がリン脂質から成るPEG誘導体を用いたPEG修飾NPにおいて、分散液とSFD微粒子の投与による肺内動態の差異が小さいことを見出した。また、PEG部分の分子量が大きいPEG誘導体を用いたPEG修飾NPでは、気道から肺組織への移行がより遅延する傾向が見られた。 マウスでの肺障害性評価において、脂溶性部分がコレステロールから成るPEG誘導体を用いたPEG修飾NPで障害性が比較的高かったが、他のNPについては明確な障害性が認められなかった。一方、分散液と比べてSFD微粒子として投与した場合には、障害性がより低い傾向が見られた。
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