研究課題
平成30年度は、実施計画に基づき、開発した終末糖化産物(AGEs)の一斉分析法および既に開発しているストレスホルモン分析法を用いて、生活習慣との関連で糖化ストレスや慢性ストレスの評価法を検討した。また、タバコ煙曝露による糖化ストレスへの影響を評価するため、受動喫煙の実態をニコチンやコチニンをバイオマーカーとして測定した。さらに、糖化ストレスによる生活習慣病発症の要因として、AGEs生成モデルによる蛋白質と糖の加熱による生成、食品からのAGEs摂取を把握するため、食品試料中の含量を測定した。1. コルチゾール、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン及びメラトニンなどのストレス関連ホルモン類を分析対象として、インチューブSPME/LC-MS/MS法による毛髪分析法を検討し、pg/mgレベルで定量評価する方法を開発した。2. 生活習慣のアンケートと毛髪中ニコチンやコチニン含量から、慢性的な受動喫煙によるストレスとの関連性を評価した。特に、煙のでない加熱式タバコによる影響を喫煙者及び受動喫煙者から解析した。3. アルブミンやヘモグロビンとグルコースを加熱すると、メイラード反応により、褐変化現象が観察され、蛍光測定や質量分析で、糖化が生じていることを確認した。また、食品中AGEsを測定した結果、醤油や味噌、海苔などに数百ngレベルのカルボキシメチルリジン及びピラリンが、またビールにもピラリンが高濃度に検出されたが、ペントシジンは鰹節やパンなどにわずかに検出された。本研究で開発した分析法を用いれば、煩雑な試料前処理を必要とせず、選択的かつ高感度な分析が可能であり、糖化ストレスによる健康影響や疾病診断などへの応用が期待される。また、AGEsの生成メカニズムnお解明やAGEsの分子種を特定することが可能である。
3: やや遅れている
AGEsの分析において、生体試料や食品試料を分析する場合、マトリックスの影響を受け、回収率が悪く正確に定量できない場合がある。これを補正するためには、安定同位体標識化AGEsが必要であるが、入手が困難であり、カルボキシメチルリジンのみ入手先が判明したが、輸入のため時間がかかった。そのため、一部計画を変更し、AGEsの生成メカニズムを解析すべく、モデル系で実験を行ったため、当初の計画通りには進まなかった。
ボランティア健常人の生活習慣アンケート調査と、生体試料中の糖化ストレス及び酸化ストレス(生体ストレス)レベルを測定し、多面的な生体ストレス解析評価法としての有効性を検証する。また、AGEsの生成メカニズムを解析し、どのような条件でどのAGEが生成しやすいのか、またどのような食品にAGEsは多く含まれているのかを明らかにして、野菜などの抗酸化食品摂取による糖化ストレス防御など、食生活の改善や生活習慣の改善などにより糖化ストレス予防について考察する。また、最終年度に当たり、研究成果の取りまとめと学会発表、インパクトの高い英文ジャーナルへ論文として公表し、インターネットやマスメディアを通じて、社会・国民に向けてアピールする。
支払い予定であった輸入試薬が年度内に納入できなかったため。
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