研究課題/領域番号 |
17K08260
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研究機関 | 第一薬科大学 |
研究代表者 |
安川 圭司 第一薬科大学, 薬学部, 准教授 (80372738)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 潰瘍性大腸炎 / 硫黄 / 亜硫酸塩由来ラジカル |
研究実績の概要 |
硫酸塩や硫化物の多量摂取と潰瘍性大腸炎発症との相関や硫酸塩の酵素的還元により生じる亜硫酸塩から連鎖的に生成するラジカルの高反応性に着目し、「大腸炎の発症段階で亜硫酸由来ラジカルが産生し、その産生が大腸上皮の細胞毒性発現や透過性亢進に関与するか否かを解明すること」を本研究の目的とした。 本研究では、高分子硫酸エステル化合物として、大腸炎誘発物質であるデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)およびDSSと同様に硫酸エステルを多数含む生体内高分子ではあるが大腸炎を誘発しないヘパリン(β-D-グルクロン酸またはα-L-イズロン酸とD-グルコサミンが重合した多糖類)を用いた。DSSやヘパリンの製造段階での硫黄含量の調節は困難であり、製造元により、または同じ製造元でもロットにより異なる。また、DSSの硫黄含量は大腸炎形成への影響因子であることが報告されている。そこで、製造元やロットの異なる3種のDSSやヘパリンについて、酸加水分解で生じた硫酸イオンを塩化バリウムで沈殿させ、過剰の塩化バリウムをEDTAで滴定することにより、硫黄含量の分析を行った。その結果、3種のDSSの硫黄含量は17.9%~18.7%の範囲内であった。ヘパリンの硫黄含量は11.3%であった。 そこで、硫黄含量17.9%と18.7%のDSSを水道水に溶解して5w/v%溶液を調製し、ICRマウス(雄性6週齢)に7日間自由飲水させると、ともに陰性対照群よりも体重増加の鈍化と大腸長の短縮が観察されたが、両者の間に有意差は認められなかった。 また、亜硫酸塩濃度の市販キットによる定量性を検討し、3種のDSSとヘパリン試薬自体の亜硫酸濃度は検出限界以下であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
デキストラン硫酸ナトリウムやその類似物質であるヘパリンの硫黄含量の分析、亜硫酸塩濃度の検討など、ほぼ予定通り進行している。 当初、亜硫酸塩由来ラジカルのESR・スピントラップ法による検出系を確立する計画であったが、次年度に変更し、その代わり、次年度に計画していた大腸炎の評価を今年度に行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、亜硫酸塩由来ラジカルのESR・スピントラップ法による検出系を確立し、DSSやその脱硫酸化体との反応性、さらにDSS誘発大腸炎マウスにおける亜硫酸塩由来ラジカルの検出を試みる。 その結果に応じて、亜硫酸塩由来ラジカル産生に関わる酵素の発現や活性の評価など、産生メカニズムの検討も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ESR・スピントラップ法による亜硫酸塩由来ラジカル検出系の検討を次年度に変更したことに伴い次年度使用額が生じた。その次年度使用額は、その翌年度分として請求した助成金と合わせて、その検出系の検討および当初の次年度計画を実施する目的で使用する予定である。
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