研究課題/領域番号 |
17K08261
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
山崎 啓之 崇城大学, 薬学部, 教授 (30435143)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アルブミン / 肺内動態 / 吸入 / ドラッグデリバリー / コンジュゲート / タンパク結合 |
研究実績の概要 |
本研究は、アルブミンの肺内動態並びに薬物エスコート能の解明とそれらの制御を通して、アルブミンを薬物の輸送担体として肺局所及び全身性疾患の治療に応用するという、新規の薬物デリバリー法を構築することを目的として行っている。 本年度は、まず、アルブミンの構造改変体(ダイマー、マンノース化体、PEG化体、凝集体)を調製し、これらをCy5で標識した後、ラット初代培養肺胞細胞単層膜透過性を観察し、アルブミン単独のデータと比較した。その結果、いずれの構造改変体もアルブミンより低い膜透過性を示すことが明らかとなった。本実験と並行して、ラット由来肺胞マクロファージ(NR8383)を用いた取り込み実験を行ったところ、マンノース化体および凝集体ではアルブミンおよび他の構造改変体に比べマクロファージへの取り込みが高いことが示唆された。このように、昨年度明らかにしたアルブミンの電荷の調整に加え、アルブミンの多量体化あるいは表面修飾によって、肺胞膜透過性、肺胞腔内滞留性さらにはマクロファージへの標的化等、薬物の肺内動態を制御できる可能性が示唆された。次に、ミカファンギンを用いてアルブミンあるいはダイマー共存下での膜透過性を検討したところ、ダイマ―共存下での透過性がアルブミン共存下の場合よりも低いことが明らかになり、呼吸器真菌症などの肺局所の疾患への適応の可能性が示された。さらに、リファブチンを用いてマンノース化体共存下での肺胞マクロファージへの取り込みを検討したところ、有意ではないもののアルブミン共存下以上の取り込みが示され、肺結核などの疾患への利用が期待された。以上のように、薬物の肺内動態制御を目的としたデリバリーキャリアとしてアルブミンの利用に向けて有用な基礎知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アルブミンの構造改変体と薬物の複数の組み合わせでの細胞透過実験ならびに取り込み実験に時間を要したため、阻害剤等を用いた透過・取り込み機構等の詳細に関する検討ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の予備検討により、肺胞透過性、肺胞腔内滞留性、マクロファージ標的性を目的とするアルブミン構造改変体の選択の見通しが立ったため、動物を用いたその実証と透過・取り組み機構の詳細に関する検討を、構造改変体と薬物の組み合わせを絞り込んで効率的に行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
アルブミンの蛍光標識を共同研究者が合成したCy5で行ったため、当初予定していたインドシアニングリーン標識のための試薬を購入する必要がなくなった。未使用額については、次年度実施予定の動物実験においてラットの購入に使用する計画である。
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