研究課題
本研究は、アルブミンの肺内動態並びに薬物エスコート能の解明とそれらの制御を通して、アルブミンを薬物の輸送担体として肺局所及び全身性疾患の治療に応用するという、新規の薬物デリバリー法を構築することを目的として行っている。本年度は、前年度までのin vitroでの検討により肺内動態制御能を有することが示唆されたアルブミンの構造改変体を用いて、in vivo実験による検証を行った。構造改変体としては、カチオン化体、ダイマーおよびマンノース化体を用い、それぞれ肺胞膜透過能、肺胞腔内滞留能およびマクロファージへの標的化能を示すかを、ラット肺へのリファブチンとの併用投与によって検証した。その結果、アルブミンやカチオン化体との併用投与では、薬物単独投与に比べ薬物の血中濃度が高くなり、その効果はカチオン化体で強い傾向にあった。マンノース化体では、薬物単独投与やアルブミン併用投与より、肺胞マクロファージに薬物とともに移行している傾向が示された。ダイマーは薬物とともに肺胞上皮被覆液層画分中に存在していたが、肺内動態ならびに血中濃度推移にアルブミンの場合と大きな差は認められなかった。このように、アルブミンやカチオン化体は全身への薬物移行性の向上に、マンノース化体は肺胞マクロファージへの標的による局所療法に応用が可能であることが示唆された。一方、in vitroでの検討で肺胞腔内滞留性の向上が示唆されたダイマーについては、in vivoではアルブミンとの違いが明らかにならなかった。今後、分子量(多量体化)と肺胞腔内滞留能の関係を明確にする検討を行い、肺胞腔内滞留能を有する構造改変体の開発につなげる予定である。以上のように、薬物の肺内動態制御を目的としたデリバリーキャリアとしてのアルブミンの利用に向けて有用な知見を得ることができた。
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