研究課題/領域番号 |
17K08264
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
井上 飛鳥 東北大学, 薬学研究科, 准教授 (50525813)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Gタンパク質共役型受容体 / シグナル |
研究実績の概要 |
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は複数のエフェクタータンパク質を介して細胞内シグナル伝達を誘導する。それぞれのGPCRは異なるパターンでエフェクタータンパク質に結合することで個々のGPCRに特徴的な細胞応答が誘起される。近年の創薬研究では内因性リガンドとは異なるパターンのシグナルを誘導するGPCRリガンドが着目されている。この作用を有するGPCRリガンドはバイアスリガンドと呼ばれ、薬効の主作用のシグナルを維持したまま、副作用のシグナルを減弱させることができ、副作用を切り分けられる創薬として期待される。本研究では三量体Gタンパク質ごとのバイアスシグナルに着目し、GPCR作用薬についてシグナル活性を測定する。当該年度は前年度までに見出したアンジオテンシンII(AngII)受容体の合成リガンドSIIについて、スプリットルシフェラーゼGタンパク質アッセイを用いてそのシグナル活性を検証した。その結果、SIIは内因性リガンドのAngIIと比較してGqシグナルが減弱し、G12シグナルは同等であることが確認できた。並行してGPCRシグナル検出手法の開発を行い、細胞内のイノシトール3リン酸(IP3)量を測定できるスプリットルシフェラーゼバイオセンサーを構築した。このバイオセンサーはGqタンパク質の遺伝子欠損HEK293細胞ではGPCRリガンド刺激時の応答が消失したことから、Gq-PLCβ-IP3経路を選択的に評価できることと検証するとともに、Ca2+流入アッセイおよびTGFα切断アッセイと比較して同等の感度(EC50)を有することを確認した。また、Gs欠損細胞とGs骨格キメラを用いたGPCRシグナル評価系を構築し、プロスタグランジン受容体を用いてそれぞれのGタンパク質共役活性を定量的に測定できることを検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
AngII受容体のシグナルバイアスを見出すとともに、Gs骨格を用いたキメラGタンパク質によるGPCRシグナル評価系を確立した。さらに構築したGPCRのシグナルアッセイ系を用いて多数の共同研究を実施し、論文発表の成果が得られた。したがって、当初の計画計画の想定以上に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の実験結果からSIIのGタンパク質選択性を見出したことから、今後はAngII受容体に対して臨床試験が行われている化合物TRV120027をペプチド合成し、同様のシグナルバイアス活性を有するか調べる。また、SII やTRV120027はβアレスチンへのバイアスが知られていることから、本研究で見出したGタンパク質選択性との関連の有無を調べる。さらに、GqとPLCβの相互作用を検出可能なスプリットルシフェラーゼセンサーを構築し、カルシウム感受性受容体を始めとしたGqシグナル研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬のランニングコストを削減した結果、当該年度の執行額が当初計画よりも少なくなった。次年度は共同研究の増加に伴い、次年度使用額を物品費として執行する計画である。
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