平成31年度は、LRRK2によるリソソーム局在の制御について検討した。家族性パーキンソン病変異型(Y1699C)3xFLAG-LRRK2とHA-Rab10を恒常発現するHEK293A細胞(クローン41-4)をLRRK2特異的阻害剤で処理し、リソソームやその他の主要オルガネラのマーカータンパク質で免疫染色を行った。その結果、LRRK2阻害剤の有無によりリソソームの細胞内局在が変化することが明らかになった。これは、LRRK2により何らかのタンパク質がリン酸化されることで、リソソームの細胞内輸送が制御されることを示唆している。 次に、LRRK2のRab10リン酸化やリソソーム局在制御に関与する遺伝子を網羅的にスクリーニングする実験系を立ち上げた。クローン41-4は接着が弱くスクリーニングに適していなかったため、Y1699C変異型LRRK2を恒常発現するU2-OS細胞を作製した。この細胞でもRab10リン酸化はLAMP1陽性のリソソーム上に局在しており、LRRK2阻害剤処理によってRab10リン酸化が消失し、リソソームの局在が変化した。この細胞は接着が比較的強く、siRNAのトランスフェクションから蛍光免疫染色までを問題なく行えることが確認できたため、今後ゲノムワイドsiRNAスクリーニングを行う。 研究期間全体を通じ、LRRK2によりリン酸化されたRab10がリソソームに局在することを明らかにし、LRRK2がキナーゼ活性依存的にリソソームの局在を制御することを見出した。これらの結果から、パーキンソン病で生じるLRRK2の異常活性化はリソソームの機能異常を引き起こすことが示唆された。今後さらに詳細な分子機構を明らかにすることで、パーキンソン病における神経変性の新たな創薬標的の提示につながることが期待される。
|