研究課題
本研究の目的はロコモティブシンドロームを改善する組織選択的なアンドロゲン受容体作働薬の解析を行うことである。超高齢社会の到来により、老人性骨粗鬆症とサルコペニアの罹患者が増加している。男性ホルモンであるアンドロゲンが欠乏すると、骨量と筋量の低下をきたすことから、骨と筋に選択的に作用し、前立腺などへの副作用がない、組織選択的なアンドロゲン受容体作働薬(SARM)が求められている。2019年度は、これまで実施が難しかった、筋量の3次元解析計測において、2018年度に確立することができた計測方法を用いて筋量の解析を行なった。また、最先端の質量分析イメージングによる薬物動態の解析技術を駆使して、運動器由来の筋・骨格系疾患の検出法の基盤確立を行なった。骨量低下・筋量低下モデル動物としてマウスに精巣摘出を施し、同時にBA321を投与し、生体用マイクロCTの3次元解析により計測した。下腿三頭筋の筋量について3次元マイクロCTを用いて定量化した結果、BA321投与群では下腿三頭筋量の回復が認めらなかった。一方で、精嚢腺には作用せず、男性生殖器への作用を有さないことが明らかとなった。さらに、質量分析イメージングを用いたドラッグデリバリー解析においては、骨と筋での動態観察の基盤を確立した。本研究では、新規カルボラン化合物BA321を用い、最先端の質量分析イメージングによる薬物動態の解析技術を駆使して、運動器由来の筋・骨格系疾患を改善する治療薬の開発を目指した。骨量低下・筋量低下モデル動物を用いてBA321の骨と筋への作用を解析した結果、BA321投与群では大腿骨骨密度の回復が認められたが、筋量には影響を与えなかった。また、男性生殖器への作用を示さないことが明らかとなった。従って、BA321は骨組織選択的に作用するSARMとなり得る可能性を示唆した。
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