研究課題/領域番号 |
17K08267
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
倉石 貴透 金沢大学, 薬学系, 准教授 (90613167)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | NF-κB |
研究実績の概要 |
研究代表者は、新たな自然免疫制御因子の同定を行うため、進化的に保存されているToll経路を対象として、Toll経路の活性化が強く見られるショウジョウバエ培養細胞株を独自に見いだし、その細胞を用いてin vitroのゲノムワイドRNAiスクリーニングを行った。 その結果、新規HECT型E3ユビキチンリガーゼを発見し、Sherpaと命名した。Sherpaは、ショウジョウバエNF-κB経路であるToll経路の活性化に必須であり、Toll受容体のアダプター分子dMyd88をユビキチン化し、dMyd88の細胞膜近傍への局在を制御していることを明らかにした。 Toll受容体の活性化は、dMyd88やTube, Pelleなどのタンパク質から構成される巨大複合体の形成を促進する。研究代表者は、SherpaもdMyd88複合体の構成成分であることを示している。さらに、Sherpaは、dMyd88複合体の構成成分をユビキチン化することも示している。しかし、本ユビキチン化反応の詳細な分子機構と、ユビキチン化と複合体形成の連関はまだわかっていない。そこで本研究では、ユビキチン化されたdMyd88複合体の構成成分を網羅的に明らかにすることで、Sherpa-dMyd88複合体の活性制御メカニズムに迫ろうと考えた。 本年度は Sherpa-dMyd88複合体の活性を制御する因子を同定するため、また、ユビキチン化されたdMyd88複合体構成因子に結合して下流へシグナル伝達を行う因子を同定するため、dMyd88複合体を構成する因子を明らかにしたいと考えた。そのため、タグを付加したdMyd88とSherpaを共発現させた細胞において、タグに対する抗体でdMyd88の免疫沈降を行い、沈降物中のタンパク質をLC-MS/MSショットガン解析により網羅的に同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Sherpa-dMyd88複合体に含まれるタンパク質を、LC-MS/MSショットガン解析により網羅的に同定することができた。その結果、これまでに知られていなかった複合体構成分子や、複合体を構成する分子のリン酸化やユビキチン化情報の情報を得ることもできた。 さらに、dMyd88複合体下流へシグナル伝達を行う因子を同定するために、dMyd88複合体の発現によって誘導されるNF-κB活性化について、ゲノムワイドにin vitroのRNAiスクリーニングを行った。その結果、多くのキナーゼにおいて、上記のショットガン解析による複合体構成成分との重複が認められ、複合体構成成分が機能的にも重要であることを示唆する結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
予定していた実験が順調に進んでいるため、今後は本プロジェクトの研究結果をまとめた原著論文の作成と採択を目指す。 また、mSherpaの機能解析を行うため、Crispr/Cas9法によりmSherpaを欠損するマウスの作出し、ホモ欠損マウスが得られた。感染実験等の表現型解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
1000円以下の残額であったため、次年度に繰り越すこととした。
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