研究実績の概要 |
近年, 一次繊毛(primary cilia)と呼ばれる細胞内小器官の形成不全および機能異常が, 種々の発達異常や疾患(繊毛病)の原因となることが明らかになり注目を集めている。これまでに申請者は, タンパク質分解の主要経路であるユビキチン・プロテアソーム系が、一次繊毛の形成に必要不可欠であることを発見し, その分子機構の一端を明らかにしてきた。本課題ではこれまでの研究を発展させ、ユビキチン化酵素/脱ユビキチン化酵素の活性バランスによる一次繊毛の形成メカニズムを分子レベルで明らかにすることを目的としている。 本研究では、脱ユビキチンか酵素のsiRNAライブラリーを用いた網羅的スクリーニングにより、一次繊毛の形成抑制に働く6つ脱ユビキチン化酵素(USP8、USP38、USP43、USP52、USP54、UCHL3)を同定することに成功した。特に、USP8は、EGF受容体(EGFR)によりTyr717およびTyr810をリン酸化されることで活性化し、一次繊毛の抑制因子であるトリコプレイン-オーロラA系を安定化することを明らかにした。増殖細胞において、EGFR-USP8-トリコプレイン-オーロラA経路のいずれか分子を機能阻害すると、一次繊毛の形成に依存した細胞周期停止が起こることから、EGFRは一次繊毛の形成抑制を介した経路により細胞増殖を促進していることが判明した。本研究成果により、一次繊毛の形成と細胞増殖の連関が分子メカニズムから明らかとなった。
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