研究課題
一次繊毛と呼ばれる細胞小器官の形成不全および機能異常は、種々の発達異常や疾患(線毛病)の原因となることが明らかにされ、一次繊毛の形成メカニズムの解明が求めてられている。これまでに研究代表者らは、タンパク質分解の主要経路であるユビキチン・プロテアソーム系が一次繊毛形成に必要不可欠であることを発見し、その分子機構の一端を明らかにしてきた。本課題ではこれまでの研究を発展させ、ユビキチン化酵素/脱ユビキチン化酵素の活性バランスによる一次繊毛の形成メカニズムを分子レベルで明らかにすることを目的としている。本年度は、前年度までに発見している一次繊毛の形成抑制経路「受容体型チロシンキナーゼEGFR→脱ユビキチン化酵素USP8→トリコプレイン→オーロラA」のシグナル伝達系を重点的に解析し、これらの経路が細胞増殖の抑制に働いていることを明らかにした。また、USP8のノックアウトゼブラフィッシュを用いて解析したところ、一次繊毛の異常および繊毛病症状が観察された。本研究成果により、一次繊毛の形成が細胞増殖と連関することを示した。さらにはUSP8など一次繊毛制御因子が、癌など異常な細胞増殖による疾患の標的ターゲットとなりうることが期待される。
1: 当初の計画以上に進展している
一次繊毛の形成を制御するシグナル伝達系を解明し、論文としてその成果を発表しており、当初の計画以上に進展していると言える。
本研究において、一次繊毛の抑制因子として同定した脱ユビキチン化酵素について、未だ分子メカニズムが不明である5つの脱ユビキチン化酵素(USP38, USP43, USP52, USP54, UCHL3)について機能解析を進める。また、癌と一次繊毛の関連を調べるため、癌細胞において申請者らが発見した一次繊毛抑制経路(EGFR-USP8-トリコプレイン-オーロラA)がどのように働いているか解析する。
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