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2017 年度 実施状況報告書

テネイシンX欠損に起因するエーラス・ダンロス症候群の慢性疼痛発症メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K08271
研究機関島根大学

研究代表者

堺 弘道  島根大学, 総合科学研究支援センター, 助教 (00375255)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードエーラス・ダンロス症候群 / テネイシンX / 関節 / 筋肉 / 慢性疼痛
研究実績の概要

遺伝性結合組織疾患エーラス・ダンロス症候群(EDS)は,患者の関節や筋肉に慢性疼痛をもたらし,著しくクオリティー・オブ・ライフ(QOL)を低下させる.本研究は,まず,EDSの原因遺伝子の一つであるテネイシンX(TNX)に着目し,TNX欠損に起因するEDSの慢性疼痛発症メカニズムを明らかにすることとした.ヘマトキシリン・エオジン染色法を用いてTNX欠損マウスの腱や靭帯,筋肉の結合組織の構造的変化を詳細に観察した.しかしながら,膝関節部,足関節部,足指部のいずれにおいても,腱や靭帯,筋肉に構造的異常は見られず,また,関節の痛みに関連する他の部位(軟骨,滑膜,骨膜等)にも大きな構造的異常を見出すことは出来なかった.さらに,これらの結合組織におけるマクロファージ等の炎症細胞の浸潤も観察することは出来なかった.
次に,我々は本研究計画以前にTNX欠損マウスの坐骨神経において血管数が減少することを観察していたことから,この血管数の減少が慢性疼痛に関与するのか否かを検討することにした.TNX欠損マウスの坐骨神経おける血管数についてさらに詳細に調べたところ,TNX欠損マウスでは坐骨神経の血管数が18.6%減少していることがわかった.逆に,血管の径はTNX欠損マウスで17.0%増大していた.そこで,TNX欠損マウスの坐骨神経は虚血状態にあり,その虚血状態が痛みと関連するのか否かを明らかにするために,低酸素状態で誘導されるHIF-1αの発現レベルを調べた.しかしながら,HIF-1αは殆ど発現誘導されていないことがわかった.これらの結果から,TNX欠損マウスの坐骨神経の血管数の減少は,痛みを引き起こすような大きな虚血状態を引き起こすわけではないと考えられた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

EDSの原因遺伝子の一つであるTNXに着目し,TNX欠損マウスの膝関節部,足関節部,足指部の構造を詳細に調べ,TNX欠損マウスの腱や靭帯,筋肉などの結合組織に大きな構造的異常がないこと,そして,マクロファージ等の炎症系細胞の浸潤がないことを示した.一方で,坐骨神経においてはTNX欠損マウスの血管数が減少すること,逆に血管の径は増大することを見出した.従って,全体的に本研究は実施計画に基づきおおむね順調に進展していると判断した.

今後の研究の推進方策

遺伝性結合組織疾患EDSは,患者の関節や筋肉に慢性疼痛をもたらし,著しくQOLを低下させる.TNXはEDSの原因遺伝子の一つであるが,我々は,現在までにTNXと関節や筋肉における慢性疼痛との関連性を見出すに至っていない.一方で,EDSの筋組織における慢性疼痛を引き起こす要因としては,傷害を受けた筋再生能力が十分でないことが可能性の一つとして挙げられる.従って,筋組織の筋分化・筋再生メカニズムを解明することは,EDS患者の筋肉における慢性疼痛発症メカニズムを明らかにする上で重要であると考えられる.
以前,脂質代謝酵素の一つであるジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)のζアイソザイムは筋分化を制御することが示され,我々もまた,II型DGKのδアイソザイムが筋組織に高発現すること,そして,筋分化を正に制御することを示した.さらに,II型DGKのηアイソザイムも筋肉に発現していたことから,我々は,II型DGKアイソザイムが筋分化制御のために重要な役割を担っていると考えている.従って,本年度以降は,II型DGKアイソザイム(δ及びη)が制御する筋分化制御機構を細胞レベルで詳細に解明し,且つそれぞれの機能を包括的に理解する.さらに,筋肉に高発現するTNXとDGKδ及びDGKηとの関連性を細胞レベル・個体レベルで調べ,TNXが関与する筋分化制御機構を明らかにする.さらに,TNXとDGKδあるいはDGKη欠損マウスを用いることで,筋再生メカニズムを解明し,TNXに起因するEDSの筋肉における慢性疼痛発症メカニズムを明らかにする.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Where do substrates of diacylglycerol kinases come from? Diacylglycerol kinases utilize diacylglycerol species supplied from phosphatidylinositol turnover-independent pathways.2018

    • 著者名/発表者名
      Sakane, F., Mizuno, S., Takahashi, D., Sakai, H.
    • 雑誌名

      Adv. Biol. Regul.

      巻: 67 ページ: 101-108

    • DOI

      10.1016/j.jbior.2017.09.003.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] A potential contribution of tenascin-X to blood vessel formation in peripheral nerves.2017

    • 著者名/発表者名
      Sakai, H., Yokota, S., Kajitani, N., Yoneyama, T., Kawakami, K., Yasui, Y., Matsumoto, KI.
    • 雑誌名

      Neurosci. Res.

      巻: 124 ページ: 1-7

    • DOI

      10.1016/j.neures.2017.06.003.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 脂質代謝酵素ジアシルグリセロールキナーゼδの骨格筋グルコース代謝と分化における役割とその制御機構2018

    • 著者名/発表者名
      堺 弘道,坂根 郁夫
    • 学会等名
      第123回日本解剖学会
    • 招待講演
  • [学会発表] 細胞外マトリックス・テネイシンXは末梢神経の血管形成に関与する2017

    • 著者名/発表者名
      堺 弘道, 松本 健一
    • 学会等名
      第90回日本生化学会大会
  • [学会発表] ジアシルグリセロールキナーゼδはC2C12筋芽細胞の筋分化誘導のためにcyclin D1の発現を制御する2017

    • 著者名/発表者名
      堺 弘道, 松本 健一,坂根 郁夫
    • 学会等名
      第59回日本脂質生化学会
  • [備考] 島根大学 総合科学研究支援センター 生体情報・RI実験部門

    • URL

      http://www.med.shimane-u.ac.jp/CRLHP/index.html

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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