研究課題/領域番号 |
17K08273
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
古田 和幸 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (50644936)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 樹状細胞 / Rab11 / 抗原提示 / MHC-II |
研究実績の概要 |
樹状細胞は生体に侵入した病原体などの外来抗原を取り込み、主要組織適合抗原クラスII (MHC-II)を介して外来抗原由来ペプチドを T細胞に提示することで免疫応答を誘導する。この樹状細胞における抗原提示分子(MHC-I, MHC-II)や共刺激分子(CD80, CD86など)の細胞表面発現量は、抗原特異的な免疫応答を調節する因子のひとつである。これまでにリポ多糖(LPS)などの病原体成分による刺激は、その受容体であるTLRを介したシグナルにより樹状細胞表面のMHC-IIおよび共刺激分子などの発現を増強することで、樹状細胞による抗原提示機能を増強することが知られている。しかしながらその発現調節の詳細な分子メカニズムは不明である。MHC-II細胞表面発現は、細胞表面からのエンドサイトーシスによる取り込み、および細胞内からの細胞表面へのリサイクリングによって制御されると考えられる。前年度までにMHC-IIの発現は細胞内小胞輸送の制御タンパク質のひとつであるRab11を介した細胞表面へのリサイクリングによって制御されることを示唆する結果を得ていた。そこで、樹状細胞における細胞表面MHC-IIの発現量調節の詳細な分子メカニズムを明らかとすることを目的として解析を行い、今年度は以下の結果が得られた。 1) TLR刺激が活性化するシグナル伝達分子のうちMHC-IIの発現上昇を誘導するシグナル系を見いだした。 2) TLR刺激はRab11のGAPの発現を低下させることは前年度に見出している。今年度はそれを制御するシグナル伝達経路を見いだした。 3) 細胞表面MHC-IIのエンドサイトーシスはカルシウム流入によって促進されることを見出している。今年度はカルシウム流入によるPKCの活性化がエンドサイトーシスを促進すること示唆する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では樹状細胞における抗原提示分子の発現制御因子の同定を行い、その因子の役割について強制発現およびノックダウンといった遺伝子的な改変による検証を行っている。しかしながら、樹状細胞への遺伝子発現用ベクター作成、および高活性の発現ウイルスの調整に予定以上に時間を要した。そのため実験計画はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、樹状細胞への外来遺伝子発現ウイルスを高効率に導入する方法の確立に成功している。今後、これの方法を用いて抗原提示関連分子の発現制御因子の候補因子を外来的に導入し、制御因子の同定および役割の解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では樹状細胞における抗原提示分子の発現制御因子の同定を行い、その因子の役割について強制発現およびノックダウンといった遺伝子的な改変による検証を行っている。しかしながら、樹状細胞への遺伝子発現用ベクター作成、および高活性の発現ウイルスの調製に予定以上に時間を要した。そのため実験計画がやや遅れ未使用の予算が生じた。 上述の様に実験にやや遅れが出たため、実験計画の終了を次年度に繰り越した。繰り越した研究費は次年度の研究を遂行する上で適切に使用する。研究費は消耗品を中心に従来の研究計画に沿って使用する予定である。
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