ある特定のタンパク質の阻害剤との相互作用の様式を解き明かす方法として、阻害剤存在下でも活性を示す「復帰変異株」を獲得するという方法があるが、従来の変異剤を用いたランダム変異誘発法ではゲノムに非選択的な変異が入るため、オフターゲット効果によるアーティファクトの排除が大きな課題であった。一方で、標的タンパク質だけに変異を入れる方法としては、そのcDNAにランダム変異を入れるerror prone PCRが有用であるが、ベクターとのligationと宿主の形質転換効率の低さが問題で復帰変異株の獲得には不向きだった。申請者らはerror prone PCRを酵母の高効率な組換え法であるgap-repair cloningと組み合わせることで、極めて高効率に復帰変異株を獲得可能であることを見出した(山越ら、Mitochondrion 32(2017)1)。 申請者は、このように開発された高効率な復帰変異株獲得法を膜タンパク質とリガンドの相互作用を解析するための新たな方法論として発展させることを計画、まずはミトコンドリアのADP/ATP輸送体とその特異的阻害剤であるボンクレキン酸との相互作用の解析に着手した。その結果、ボンクレキン酸に対する抵抗性を示す酵母を獲得する実験条件を特定することに成功し、実際にADP/ATP輸送体の5つの変異株、L142S、I200V、S245P、G298S、V301Iを獲得することができた。
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