研究課題
本研究は、細胞死のキーマシナリーであるミトコンドリアの透過性遷移のON/OFFを制御する分子基盤の構築に向け、その起点となるミトコンドリアのカルシウムユニポーターがカルシウムイオンを取り込む分子機構を解明することにより、虚血再灌流障害・筋ジストロフィー・アルツハイマー病などの細胞死疾患の革新的な治療薬を創製することを目的とする。前年度までに、ミトコンドリア透過性遷移を制御し得る分子としてmitochondrial calcium uniporter(MCU)に焦点を当て、MCUで構成されるカルシウムイオンチャネルがカルシウムイオンを輸送する分子機構を解析した。その結果、MCUのカルシウムイオンの輸送機能に重要となるアミノ酸残基を特定することができた。本年度は、これらのアミノ酸残基がなぜカルシウム輸送機能に重要であるのかを解析するとともに、その結果の取り纏めを行った。解析の結果、機能に重要であることが分かったアミノ酸残基は、MCUがそのミトコンドリア内腔側に露出したアミノ酸領域中でコイルドコイル構造を形成するために重要であり、MCU内でコイルドコイル構造が形成されることがカルシウムの取り込み機能に重要であることが分かった。この結果を、昨年8月に明らかになったMCUの立体構造モデルをもとに考察したところ、MCUのコイルドコイル構造は、ミトコンドリア外からチャネル内を通過して入ってきたカルシウムイオンがミトコンドリア内腔に出る際の出口となっている間隙を開閉するために重要であることが示唆された。このことから、ミトコンドリア透過性遷移をON/OFFするための標的部位として、MCUのコイルドコイル構造が有用であることが示唆された。以上の成果をBiochimica et Biophysica Acta (BBA) Bioenergeticsに発表した。
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Biochim Biophys Acta Bioenerg
巻: 1860 ページ: 148061-148071
10.1016/j.bbabio.2019.148061. Epub 2019 Aug 5