研究課題
申請者はこれまでに中枢神経系における甲状腺ホルモンの機能亢進および低下症による神経・精神症状、およびそのメカニズムとして、脳スライス標本を用いたグリア細胞の形態変化、およびその性差と週齢差に注目して解析してきた。加齢によって増える甲状腺機能異常は殆どが低下症であり、高齢化社会で増えるウツや認知症には、甲状腺機能低下症が大きく関わっている。また、加齢による甲状腺機能低下症は圧倒的に女性に多い。また老齢の甲状腺機能低下症マウスモデルでは、認知症と関係する学習・記憶を指標とする行動実験を行い、性差について解析を行った。1年齢のマウスで行った自発行動およびウツ様症状に関するオープンフィールドテストおよびテールサスペンジョンテストでは、雄の方が雌よりも行動量低下、うつ様症状を示唆する無動時間が、若齢に比べて増えた。老齢の甲状腺機能低下症マウスでは、雌でのみ、好奇心を示すレアリングが顕著に下がったものの、他には顕著な変化が見られなかった。老齢の雌の甲状腺機能低下症マウスの脳で、海馬のアストロサイト活性化が見られたため、記憶・学習における変化を見るため、モリス水迷路試験を行ったが、顕著な差は見られず、若齢との差も観られなかったため、1年齢はまだ十分な老齢ではないこともわかった。しかし、1.5年齢のマウスで甲状腺機能低下症を作成すると、致死作用が出ることも判明し、老齢の甲状腺機能低下症マウスモデル作成の困難さに直面した。女性の更年期ウツや、閉経後に認知症になるリスク要因として、甲状腺機能低下症が関わっていることが臨床的に示唆されていることから、細胞レベルでは、ミクログリアに対する甲状腺ホルモンによる化学走性に及ぼす女性ホルモン・エストロゲンや男性ホルモン・テストステロンの影響を見たが、顕著な影響は見られなかった。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 8件、 招待講演 6件) 備考 (1件)
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