研究課題
平成30年度の検討において、大腸がん細胞の抗がん剤(イリノテカンやイリノテカン活性代謝物SN38、パクリタキセル、5-フルオロウラシル)耐性株においてABCトランスポーターの中でもABCB1の高発現が認められたため、ABCB1高発現機序をウェスタンブロットや阻害剤等により種々調査したところ、ABCB1高発現の主要機序として抗がん剤耐性化に伴うプレグナンX受容体の高発現が示唆された。イリノテカン耐性株と非耐性株におけるイリノテカン代謝物の生成量をLC/MS/MS分析にて調べた結果、大腸がん細胞中にはイリノテカンとSN38のみが検出され、それ以外のイリノテカン代謝物(APC、NPCやグルクロン酸抱合体など)はほとんど検出されなかった。また、イリノテカンやSN38に対する耐性化に伴って細胞中のSN38量は減少し、細胞外(培地中)のSN38量が増加したことから、抗がん剤耐性化によるABCB1の高発現はSN38の細胞外排出能の亢進を介してイリノテカン耐性化に関与すると推察された。3種のイリノテカン耐性細胞(大腸がんDLD1とLoVo細胞、胃がんMKN45細胞)のイリノテカン感受性はアルドケト還元酵素(AKR)1C3とAKR1B10の既存の阻害剤の添加により非耐性細胞レベルにまで高められた。また、上記3種のイリノテカン耐性細胞はSN38やパクリタキセル、5-フルオロウラシルに対しても交叉耐性を示し、これらの抗がん剤に対する感受性の低下もまたAKR阻害剤の添加によって回復した。以上より、抗がん剤耐性化に伴って高発現するAKRアイソフォームの特異的阻害剤は大腸がん細胞の抗がん剤耐性化や交叉耐性化を抑制するアジュバント療法剤として有用であると考えられた。
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Chem. Biol. Interact.
巻: 314 ページ: 108839
10.1016/j.cbi.2019.108839.
http://sv1.gifu-pu.ac.jp/lab/seika/