研究課題
心不全は高血圧性心疾患、弁膜症、虚血性心疾患など種々の心疾患の共通最終像であり、この問題を解決することは極めて重要である。心不全の治療法開発のために最も必要とされていることは、治療薬のターゲットを解明することである。我々は内因性ヒストンアセチル化酵素(HAT)活性を有する p300 と 転写因子GATA 4の協力(p300/GATA4経路)が心不全発症における遺伝子発現調節に極めて重要であり、心不全治療のターゲットとなることを示した。また、p300の特異的アセチル化阻害作用を持つクルクミンが心不全の進行を抑制することを慢性心不全ラットモデルにおいて証明した。さらに、新たな心不全治療薬シーズ探索のため、p300/GATA4経路活性化を指標としたスクリーニング系を構築し、化合物ライブラリーを用いて心不全治療薬のシーズ探索を行った。我々は、リコンビナントタンパクを用いたin vitroでスクリーニングする系で、天然物化合物ライブラリーや既知薬ライブラリーを用いた検討で、ω3系脂肪酸やメトホルミンなどがp300のHAT活性を強力に抑制することを見出した。次に、上記治療薬候補化合物を用いて、新生児ラット培養心筋細胞における肥大抑制効果を指標としたスクリーニングを行い、より心筋特異的で、低濃度で心筋細胞肥大抑制効果を示す、細胞毒性の少ない、化合物を5個同定した。さらに、これらの化合物が培養心筋細胞でも肥大刺激によるヒストンのアセチル化を抑制することを見出した。最後に、心筋梗塞ラットを用いて検討したところ、ω3系脂肪酸が心不全の進行を抑制することを見出した。今後さらに検討することにより、p300/GATA4経路を制御する化合物が新規心不全治療薬となる可能性が示唆された。
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