研究課題/領域番号 |
17K08285
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
今井 浩孝 北里大学, 薬学部, 教授 (50255361)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 抗生物質 / 腸内細菌 / 心不全 / 脂質酸化依存的新規細胞死 / ビタミンE |
研究実績の概要 |
心臓特異的GPx4欠損マウスは、ビタミンE添加食では生存できるが、ビタミンEを添加しない通常食では、餌を変えてから約10日で心臓突然死を起こして致死となる。このビタミンE低下による心突然死を抑制できる医薬品をスクリーニングしたところ、抗生物質であるセフォペラゾン(CPZ)の飲水投与により、心突然死が完全に抑制されることを見出した。CPZを腹腔投与しても効果がなかったことから、腸内細菌の変化が関与していることが予想された。抗生物質CPZは培養細胞レベルでGPx4を欠損できるMEF細胞におけるGPx4欠損細胞死は直接抑制できなかったことから、CPZは抗酸化能によって心突然死をc直接抑制していないことが明らかとなった。また抗生物質の種類と濃度依存性について検討したところ、主にグラム陽性菌に作用するバンコマイシン、アスピリンは心突然死を抑制できたが、グラム陰性菌に作用するポリミキシンBは心突然死を抑制できなかった。また致死抑制において抗生物質の濃度依存性も見られた。このことからCPZ処理の際に生き残った何らかの腸内細菌が心突然死を抑制する物質を産生している可能性が高いことが明らかとなった。またCPZによる心突然死の抑制メカニズムを明らかにするために、通常食に変えてから9日目の心臓におけるリン脂質ヒドロペルオキシド生成とビタミンE量の変化について解析したところ、CPZ処理により心臓のリン脂質ヒドロペルオキシド量の生成の抑制及びビタミンE量の低下の抑制が観察された。CPZは直接脂質酸化抑制能を有していないことから、CPZ処理した際に変化した腸内細菌により、心臓での脂質酸化の抑制に関与する物質が産生されていることが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
心突然死を抑制できる抗生物質に特異性があることなど、抗生物質による心突然死の抑制メカニズムについてある程度明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、CPZ投与における腸内細菌叢の変化を次世代シークエンサーの解析により明らかにしたい。次にCPZ投与における腸内細菌を単離して、心突然死を抑制できる物質を産生しているのかについて、タモキシフェン誘導型GPx4欠損MEF細胞を用いて明らかにしたい。またこの系がうまくいった場合には、腸内細菌が産生する致死抑制物質についてノンターゲットな脂質解析により候補物質の絞り込みをしたい。CPZ投与により致死を誘導している腸内細菌を殺している場合と良い物質を産生する腸内細菌が増加してくる可能性も考えられるため、ビタミンE添加食でレスキューした心臓特異的GPx4欠損マウスを無菌マウスとして作出し、無菌条件下でもビタミンE低下により心突然死が起きるのか否かについて解析したい。
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