研究課題
昨年度までに,シェーグレン症候群(SjS)患者の血清中に,外分泌腺に選択的に存在する水チャネルであるアクアポリン5(AQP5)に対する自己抗体が高確率で存在していることや,本自己抗体がAQP5の細胞内取り込みを促進することを見出してきた.本年度は,さらに細胞内に取り込まれたAQP5の分解について調べた.AQP5発現細胞をタンパク合成阻害薬cycloheximide存在下にSJS患者血清由来のIgGで処理すると,総AQP5量が反応時間依存的に減少した.このAQP5の減少はプロテアソーム阻害薬の影響を受けず,リソソーム阻害薬の併用によって著明に抑制されたため,リソソーム系による分解を生じていると推定された.一方、SJSにたいする新たな治療法を提供するために,滋潤作用をもつことがしられる漢方薬である清肺湯の作用を調べた.清肺湯はSJS患者のIgGによって誘発されるAQP5の細胞内取り込みと分解をいずれも処理濃度依存的に抑制した.これと相関して,清肺湯は患者IgGによる細胞膜の水透過性の低下も抑制し,本方剤にSJS患者がもつ抗AQP5抗体の作用を中和する作用があると推定された.また,肺上皮細胞を標本として,外分泌腺からの水放出の引き金機序として重要なClイオン分泌に対する清肺湯の作用も調べたが,本方剤がClイオンチャネルであるCFTRを活性化することを明らかにした.本研究で明らかになった清肺湯の作用は,本方剤がSJSの治療薬として有用な薬理作用プロファイルをもつことを示しており,新たな治療オプションとして期待できる.
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