研究課題
本研究の目的は、体内時計システムによる骨格筋機能の調節機構を明らかにし、その知見を基にメタボリックシンドロームの時間薬物治療の分子基盤を提示することである。その目的を達するため、体内時計調節において中心的な転写因子であるBMAL1を骨格筋特異的に欠損したマウス(M-BMAL1 KOマウス)を作製し、そのエネルギー代謝に関する特徴を生化学的及び病理学的観点から解析した。その結果、前年度までに骨格筋においてBMAL1は、脂肪酸燃焼の制御を介してエネルギー代謝を調節していることが示された。そこで本年度は、BMAL1による脂肪酸燃焼のメカニズムを明らかにする目的でM-BMAL1 KOマウス骨格筋を生化学的に解析した。その結果、ミオグロビン及びトロポニンI slowの発現量増加が認められ、この事が前年度に明らかにしたM-BMAL1 KOマウスにおける酸素受容量の増大の要因であると示唆された。次いで、これらの遺伝子発現を制御する転写因子NFATに関して解析を行ったところ、M-BMAL1 KOマウス骨格筋においてNFATの核移行の促進が見られた。そこでNFATの核移行の調節因子である細胞内カルシウム量を測定したところ、M-BMAL1 KOマウス骨格筋において有意なカルシウム量の上昇が認められた。さらにBMAL1はカルシウムチャネルのサブユニットであるCacna1sの発現量を別の転写制御因子であるREV-ERBαを介して調節していることが示された。以上の結果よりBMAL1は、骨格筋内におけるカルシウム量の制御を通じて遅筋活性を調節することが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
昨年度は、体内時計調節において中心的な転写因子であるBMAL1を骨格筋特異的に欠損したマウス(M-BMAL1 KOマウス)を作製し、そのエネルギー代謝に関する特徴を生化学的及び病理学的観点から解析した。本年度はそれらの知見もとに、M-BMAL1KOマウスにおける遅筋活性の増加メカニズムを解析した。その結果、BMAL1はカルシュウムチャネルの発現制御を通じて、細胞内カルシウム量を調節し、最終的に酸素需要タンパク質であるミオグロビン及びトロポニンIの発現量を制御することを明らかにした。すなわち本年度は当初の目的を達成することができた。
骨格筋における網羅的遺伝子発現解析と時間薬物治療への応用① M-BMAL1 KOマウスの骨格筋における遺伝子発現をコントロールマウスのそれとRNA-Sequencingにより比較する。②骨格筋におけるBMAL1の標的遺伝子として同定された因子のうち分泌タンパク質に関してはリコンビナントタンパク質あるいは中和抗体を、代謝酵素の場合は阻害剤を、時刻(昼と夜)を変えて肥満モデルマウスに対して投与し、血糖値をはじめとする血液パラメーターの変化を検討する。
キャンペーンの利用やメーカの変更などにより効率的に物品の購入を行うことができたため。(使用計画)次年度は、遺伝子発現解析が中心となる。そのため分子生物学的実験に用いる試薬が中心となる。また遺伝子改変マウスの維持管理を引き続き行うための経費に使用する。また研究成果の発表に関する経費にも使用する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
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