研究課題
今年度は、ロイコトリエンB4受容体(BLT1受容体)が、刺激を受けるリガンド(LTB4)の濃度依存的にリン酸化修飾の度合いを亢進させること、この亢進によってBLT1は細胞内に移行するのではなく自らのリガンド親和性を低下させること、そして、高濃度リガンドに曝されることで新たな別の情報伝達を惹起することを見出した。さらに、こうしたリン酸化修飾の変化によって、好中球の遊走や局所での脱顆粒応答の切り換えがコントロールされていることを提唱した。例えば、白血球の遊走に関しては,BLT1受容体がリン酸化修飾を欠失することで低リガンド濃度環境では正常な遊走を起こすが、高濃度下に到達すると遊走の方向性が曖昧になる現象をTAXISCANシステムなどを用いた確度の高い解析法で見出した。また、高濃度LTB4下でのみ惹起される脱顆粒応答がBLT1受容体のリン酸化修飾が欠損することで起こらないことも見出した。こうしたGPCRの自らのリン酸化修飾による活性制御機構(MAPキナーゼやAKTキナーゼの活性持続性にも言及)は全く新しい発見であり(自らの修飾で親和性を変化させ、低濃度から高濃度環境に移行したことをこの親和性変化によって認識できるシステム)、炎症反応の制御機構解明に新しい情報を提供したことになる。また、新奇な抗BLT1制御剤開発にも繋がる知見である。これらの研究成果は昨年末に神戸で開催された開催されたCombio2017(日本分子生物学会・日本生化学会合同年会)で発表し、現在、論文(当初の計画よりもインパクトの高い雑誌)も投稿中である。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の研究計画よりは多少早く進んでいる。順調に推移している関係で、外部との共同研究も広がりを見せている(東京大学、東北大学、順天堂大学、国立国際医療センターなど)。論文投稿は最終年度に計画していたが、今年度末には投稿でき(当初計画よりもインパクトの高い雑誌に投稿中)、最終年度に続報が出せることを新たな目標に設定した。
当初計画より多少早く研究は進んでいる。引き続き、BLT1リン酸化修飾の生理的意義を明らかにする研究を進める。例えば、リン酸化部位のノックインマウスを作製し、提唱している成果のin vivoでの証明を行う。また、リン酸化修飾の有無でどうして細胞内情報伝達ルートが切り替わるのか、そのメカニズム(例えば、β-アレスチンの関与など)についても深く解明する。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件)
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