研究実績の概要 |
本年はBLT1のリン酸化に関与する責任キナーゼの解析を進めた。GRK2, GRK3, GRK5,及びGRK6遺伝子を破壊したHEK293細胞を用い、これら細胞内におけるBLT1のリン酸化修飾の消失を手がかりとして、GRKファミリーの関与を探った。その結果、7カ所のリン酸化修飾部位のうち、308番目のスレオニンの修飾にGRKファミリーが深く関わることを示唆した。興味深いことに、この修飾はGRK2, GRK3, GRK5,及びGRK6のいずれでも起こり、特異性は無いことが明らかとなった。また、昨年の成果でBLT1のモノユビキチン修飾の発見と責任ユビキチンリガーゼ候補としてのRNF41の同定を報告したが、このRNF41のBLT1への結合とこれに続くユビキチン修飾がBLT1のリン酸化後に亢進することを明らかにした。RNF41は通常の平時では細胞内のエンドソームに局在するが、LTB4でBLT1を活性化することで形質膜へと局在を移し、BLT1への結合が増強することを蛍光免疫染色法でも確認した。現在、このリン酸化とユビキチン修飾のとの連関の詳細解析、並びに、ユビキチン修飾の生理学的意義について解析を進めている。ところで我々は、NanoBiTシステムを用いることでβアレスチンがリン酸化依存的、非依存的の2つのパターンでBLT1にリクルートされることも見出している。これまでの解析よりBLT1は高親和性からリン酸化修飾を経て低親和性に構造変換することを見出しているが、高親和性BLT1、低親和性BLT1のそれぞれから発信される情報伝達にこれらβアレスチンのリクルートがどう関与するかも現在解明中である。
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