研究課題
本研究の目的は、ミトコンドリアのベータバレル型アニオンチャネルVDAC1/2/3それぞれの立体構造、特に、細胞死を抑制する相互作用化合物との複合体構造を解明することである。平成30年度は以下の研究を進めた。1. 結晶化促進および電子顕微鏡観察を容易にするために有効な抗体断片を取得するため、研究協力者のどどと協力し、VDAC1/2/3それぞれの一部領域を抗原としてラットを免疫し、モノクローナル抗体の作成を試みた。免疫して得られたハイブリドーマ培養上清について、リポソーム再構成VDAC1/2/3およびSDS変性VDAC1/2/3をそれぞれ用いたELISA、蛍光標識二次抗体および精製VDAC1/2/3をそれぞれ用いた蛍光ゲルろ過性状分析の評価結果から、高親和性かつ立体構造認識抗体を含む培養上清を選択し、ハイブリドーマクローニングへ進めた。クローン化抗体についても同様に性状分析を行って良好な性状が失われていないことを確認し、2種のハイブリドーマクローンを選択した。これらの細胞から抗体可変領域遺伝子をクローニングし、構造解析に適した抗体断片(Fab, scFv等)の発現系作成を進めている。2. 平成30年度以降の計画として、共結晶構造解析が計画通りに進展しない場合にNMR構造解析を行う予定であったが、代わりに近年の有力な構造解析ツールであるクライオ電子顕微鏡を利用した構造解析を目指し、昨年度に引き続きクライオ電顕用サンプル調製条件検討を行った。1.項で準備を進めている抗体断片を用いることで電子顕微鏡での検出を容易にすることができると期待している。3. VDACチャネル活性評価のために、研究協力者の大崎らへ測定用試料供給を行い、測定条件検討を進めている。
2: おおむね順調に進展している
共結晶構造解析が計画通りに進展しない場合に行う計画であったNMR構造解析の代わりに、クライオ電子顕微鏡構造解析を行うための準備を進めており、そのための抗体調製も順調に進んでいることから、概ね順調に進んでいると考えた。
平成31年度は、VDAC1/2/3を認識するモノクローナル抗体断片との複合体調製条件検討から共結晶化スクリーニングおよび複合体電子顕微鏡観察を行い、複合体構造解析を目指す。相互作用化合物の親和性測定等により、複合体形成条件を再度検討し、化合物結合構造の解析にも挑戦する。
予定していた第二の解析法として、大量に試料が必要なNMRから、少量の試料でスクリーニングが可能な電子顕微鏡法へ変更したため、試料調製費用が予定より少額で済んだ。代わりに、クライオ電子顕微鏡単粒子解析による構造解析を開始すると高額な消耗器具等が大量に必要となるため、最終年度に残した。
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