研究課題/領域番号 |
17K08299
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
赤澤 隆 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, 主任研究員 (80359299)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 免疫アジュバント / 自家がんワクチン / リポペプチド |
研究実績の概要 |
本課題では、独自の創薬戦略から人工設計したアジュバント「電荷依存的に細胞接着するリポペプチド(TLR2リガンド)」と当センターで確立された患者由来がん細胞塊培養(CTOS)技術を融合させ、創薬基盤の新型自家がんワクチンを開発することを目的としている。全体計画として、1:CTOS株を用いた癌ワクチンの動物実験モデル・評価系の作成、2:培養癌細胞を用いたワクチン調製法の最適化・癌細胞の加工法の検討、3:免疫チェックポイント阻害剤を含めた、免疫制御系解除の検討、4:人工アジュバントの再設計・再検討、5:新規人工設計アジュバント+CTOS株の癌抗原応用+新規癌細胞加工法+免疫制御系の解除を組み合わせた新たな自家癌ワクチンを開発し、実際の生対応答と整合する独自評価系を確立し、有効性を判断する。本年度は、全体計画の2、3の基盤技術部分を検討した結果を合わせて、人工設計アジュバント(P2CSR11・電荷依存的に細胞接着するリポペプチド)の論文公表に至った。 自家癌ワクチンは、患者由来の癌組織や癌細胞が内包している癌抗原をワクチンに応用する試みである。本研究戦略では、発展型自家癌ワクチンとして、効率的に患者由来の癌細胞(組織)を応用するために、A:脂質二重膜を維持させ、細胞の形を崩壊させない(内容物が漏れないように扱う)、B:癌細胞は不活化・殺処理する、C:これらの癌抗原の素材が効果的に免疫系から認識されるように加工する。これを簡便に実現させるツールとして人工設計したアジュバントがP2CSR11である。癌細胞を放射線照射によって殺処理(アポトーシス誘導)した後に、人工アジュバントP2CSR11と反応させると、P2CSR11のプラス電荷ペプチド配列が細胞膜表面に接着し、P2CSR11のTLRリガンド部分が樹状細胞の活性化や貪食・抗原提示を助けることで、効果的な免疫応答の誘導が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の進捗として、本課題のベースとなる人工設計アジュバント(P2CSR11)の基礎検討が完了し、本成果をCancer Scienceで発表した(平成30年3月 accept、4月publish)。平成29-30年度にまたがる研究計画では、論文公表に合わせて一部の実験計画を前後させているが、研究成果から判断すれば、全体計画の2、3が、予想通りに進んだと言える(具体的には、癌細胞の加工方法{一部}・免疫チェックポイント阻害剤との併用等を検討済み)。一方、1:CTOS株を用いた動物実験モデルの構築は現在も引き続き進行中であり、来年度までに確立したい。
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今後の研究の推進方策 |
平成29-30年度にわたる計画では一部前後させた検討があるが、平成30年度(2年目/研究期間3年)までの計画として予定通り完遂する。2:癌細胞の加工方法、3:免疫制御系解除については引き続き検討を進め、より有効な自家癌ワクチンを構築する。ここでは、癌細胞からの抗原調製方法として、抗がん剤処理(市販の小スケール化合物ライブラリー)による免疫原性の変化を検討したい。また、1:CTOS株を用いた動物実験モデルの構築を完成させる。必要に応じて、4:P2CSR11の有効性を強化するために人工アジュバントの改良設計も検討する(他の部分の研究進捗次第では保留する)。最終年度中に、これらの検討を完了して、最終評価したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に発注した試薬(約120千円)および論文投稿にかかった費用(約130千円、英文校正料・投稿料)の請求が4月になったため、約250千円が翌年度の決済となる予定である。研究の進捗・成果としては当初予定通りに進んでいるが、ここまでの結果をまとめて論文投稿するにあたり、研究経費のかかる実験の一部を翌年度に持ち越すことになった。これらの実験については、残りの約600千円を翌年度の人件費・謝金、物品費として使用し、平成30年度までに完遂する計画である。
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