本研究においてFCRL3アゴニストとしての利用を当初予定していた抗FCRLL3モノクローナル抗体H5について、前年度までに、アゴニスト作用が微弱であることが判明した。我々の他の細胞膜レセプターに対する抗体パネルの作製経験から、H5抗体の認識するエピトープ領域がアゴニストとしての作用を示しにくいことが考えられた。そこで、FCRL3の細胞外ドメインに対するモノクローナル抗体パネルを新たに作製しH5と異なるエピトープ領域に対する抗体を含め、7抗体からなる抗FCRL3抗体パネルを作製した。これらの抗体はH5抗体に比べてもFCRL3に対する親和性も高以降対が含まれており、精製抗体を用いて制御性T細胞機能に与える影響を検討中である。 一方、前年度までに制御性T細胞機能に高発現し、細胞増殖と機能発現に働くTNFR2レセプターに対して、モノクローナル抗体のパネルを作製し、アゴニストおよびアゴニスト抗体の同時取得に成功した。TNFR2陽性であるヒト制御性T細胞は、IL-2の存在下でTNF依存性に増殖し活性を示す。アゴニスト抗体とアンタゴニスト抗体によるTNF依存性ヒト制御性T細胞増殖に与える効果を確認した。アゴニスト抗体とアンタゴニスト抗体はいずれもTNFR2のTNFリガンド結合を阻害し、認識部位も互いに近傍であったが、アゴニスト抗体とアンタゴニスト抗体の認識エピトープはトポグラフィカルに異なっていた。本研究により、様々な疾病に関与する制御性T細胞機能を、制御性T細胞上のレセプターに対する、アゴニスト抗体とアンタゴニスト抗体により制御する治療法への発展が示唆された。
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