研究課題
セラミドキナーゼはセラミドをリン酸化してセラミド-1-リン酸を産生する酵素である。本研究では今年度、脂質代謝異常症の原因遺伝子を欠損した病態モデルマウスのセラミドキナーゼを欠損させ、病態発症におけるセラミドキナーゼの関与を検証した。まず、病態モデルマウスとセラミドキナーゼ欠損マウスを交配し、2重欠損 (DKO) マウスを作製した。病態モデルマウスは生後、中枢神経系障害に伴い振戦を発症し、その後、体重が減少し、死亡する。本研究では病態モデルマウスとDKOマウスにおけるこれら表現型を比較した。マウスの脳組織切片を作製し、脂質蓄積の程度を観察したところ、病態モデルマウスに比べてDKOマウスでは脂質蓄積が軽減されていた。また、脳組織切片の神経を染色したところ、病態モデルマウスでは顕著に神経脱落が観察されたが、DKOマウスでは神経脱落が抑制されていた。これに伴い、DKOマウスでは病態モデルマウスに比べて振戦の発症が遅延した。体重を比較したところ、DKOマウスでは病態モデルマウスに比べて最大体重が高かった。また、DKOマウスでは病態モデルマウスに比べて体重が減少するタイミングが遅延した。体重減少が観察された後の体重減少ペースは病態モデルマウスとDKOマウスの間で大きな差は見られなかった。興味深い事に、DKOマウスは病態モデルマウスに比べて生存期間が延長した。これらの結果から、脂質代謝異常症の発症にセラミドキナーゼが関与する事が明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
脂質代謝異常症の発症にセラミドキナーゼが関与する事が明らかになったため。
脂質代謝異常症の発症におけるセラミドキナーゼの役割を詳細に解析する。また、セラミドキナーゼを標的とした創薬研究も推進する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件)
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