研究課題
今年度は昨年度に引き続き、脂質代謝異常症の原因遺伝子を欠損した病態モデルマウスのセラミドキナーゼを欠損させ、病態発症におけるセラミドキナーゼの関与を検証した。病態モデルマウスの脳において神経脱落が生じる要因として、アストロサイトやミクログリアなどグリア細胞の活性化、ミエリン鞘の脱髄、オートファジー異常などが知られている。これらの現象を病態モデルマウスとDKOマウスで比較した。小脳組織切片を作製し、アストロサイト及びミクログリアを免疫染色法により観察したところ、病態モデルマウスで観察されたグリア細胞の活性化がDKOマウスで抑制されていることが明らかになった。グリア細胞を活性化するサイトカインであるインターロイキン (IL)-6及びIL-1βのmRNA量を定量的PCR法により定量したところ、何れのサイトカイン量もDKOマウスで減少していた。また、ミエリン鞘マーカーの抗MBP抗体を用いたウェスタンブロット法により、小脳における脱髄を比較したところ、病態モデルマウスで観察される脱髄がDKOマウスでは抑制されていた。また、オートファジーマーカーである抗LC3抗体を用いたウェスタンブロット法により小脳におけるオートファジーを比較したところ、病態モデルマウスで観察されるオートファジーの異常がDKOマウスでは抑制されていた。次に、セラミドキナーゼ阻害剤 (NVP-231) を病態モデルマウスに経鼻投与し、阻害剤の効果を検証した。経鼻投与は血液脳関門を介さずに脳まで薬剤を届けることが知られている。31日齢の病態モデルマウスにNVP-231を1日1回、14日間投与し、45日齢の小脳において解析した。その結果、NVP-231の投与により、グリア細胞の活性化、脱髄、オートファジーが抑制されていた。これらの結果から、セラミドキナーゼの阻害は脂質代謝異常症の発症を抑制する事が明らかになった。
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