研究実績の概要 |
慢性腎疾患 (CKD) は慢性的な腎機能低下を主徴とした腎臓病の総称であり, 元来, 原疾患にとらわれない包括的な腎臓病の治療を目標に提唱された疾患概念である. したがって, 現在の CKD 治療は, CKDに共通した症状に対する, いわゆる対症療法が基本であり, 最終的に末期腎不全に至る患者は増加し続けている. そのため, CKD撲滅の観点からも, 原疾患の病態発症メカニズムに基づいた根本治療薬の開発が重要である. 一方, アルポート症候群 (Alport Syndrome ; AS) は小児で最も頻度の高い遺伝性糸球体腎炎であり, 患者はほぼ例外なく若年で末期腎不全に至る難治性の腎疾患である. 本研究では, ポドサイトにおける p53 の機能を明らかにするため,まず,ポドサイト障害における p53 の役割解明に向けた検討を行うこととした.なお,ポドサイトにおける癌抑制遺伝子p53が AS の腎病態に対して, 保護的に作用することを見出していたことから (Fukuda R., et al., J Am Soc Nephrol. 2016),本研究では, ポドサイト障害性のネフローゼ症候群モデルマウス (抗マウスNephrin抗体投与モデル) の新たな作製とその詳細な病態解析を実施した.その結果, 本モデルは, nephrin 抗体投与後1日目から顕著なタンパク尿を呈し, 4 日目からはタンパク尿が減少した. また, 投与後 7 日目の組織では顕著な巣状分節性糸球体硬化症 (FSGS) 様病変が確認され, 炎症性サイトカインおよび腎炎症マーカー遺伝子発現も有意に増加した. また, 糸球体において nephrin の発現減少と局在変化が観察された.
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