研究課題
慢性腎疾患(CKD)撲滅の観点からも, 原疾患の病態発症メカニズムに基づいた根本治療薬の開発が重要である.本研究では,昨年度から継続中のポドサイト抗体誘導性の糸球体硬化モデルマウスを臨床病態に即したモデルとして最適化し,その有用性を示すことを目的とし,モデル誘導の詳細な条件検討と既存の治療薬に対する応答性を評価した.まず,マウスポドサイト特異的分子を免疫したウサギ血清から得られた抗体 (ポドサイト抗体) を7週齢のC57BL/6 マウスに異なる用量 (0.0625 - 3 mg) で眼窩静脈叢へ投与し経時的な腎機能パラメーターの測定,及び投与 2 週間後における腎組織学的解析を行った.その結果,ポドサイト抗体0.5 mg以上の投与群において尿中へのタンパク質の漏出が確認され,抗体1 mg以上の投与群でのみ糸球体硬化病変が認められた.次に,ポドサイト抗体1 mgの投与を腎病態誘導条件とし,臨床において,糸球体障害抑制効果が示されているレニン-アンジオテンシン系 (RAS) 阻害剤Losartanの本モデルマウスに対する効果を検証した.その結果,Losartan (125 ug/mL) の飲水投与は,ポドサイト抗体投与により上昇するタンパク尿を有意に抑制した.また,組織学的解析の結果,Losartan 投与は総糸球体数に占める硬化糸球体数の割合も有意に減少させた.さらに腎組織における腎障害マーカー (Kim-1, LCN2),炎症性サイトカイン (IL-6, KC, MCP-1) の遺伝子発現増加も,Losartan投与による抑制が認められた.これらの結果より,本モデルマウスの腎病態形成には,腎内局所RASによる増悪機構が関与することが示唆され,本モデルマウスがヒト臨床病態を反映する有用なモデルであることが示された.
2: おおむね順調に進展している
本年度の成果は,ポドサイト抗体を用いた新規糸球体硬化モデル作成の最適条件を提起するものである.さらに,既存薬を用いた薬理学的解析により,本モデルが,ヒトポドサイト障害と類似の病態発症機序を有することが証明された.本結果は,ポドサイト障害に起因する腎疾患の治療薬開発に有用な基礎的知見を提供するものである,概ね順調に研究が進行している.
ポドサイト抗体誘導性の糸球体硬化モデルマウスについては概ね条件が確立した.最終年度は,アルポート症候群の根治療法に向けた取り組みと分子標的を企図した研究を展開する予定である.
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Molecules
巻: 24 ページ: -
10.3390/molecules24030500
Experimental Dermatology
巻: 27 ページ: 1092-1097
10.1111/exd.13720
Biological and Pharmaceutical Bulletin
巻: 41 ページ: 1672-1677
10.1248/bpb.b18-00370