家族性パーキンソン病患者よりvacuolar protein sorting-associated protein 35 (VPS35)が原因遺伝子として同定された。VPS35機能異常により逆行性輸送の破綻が考えられる。しかし、この輸送経路は比較的近年に同定された経路であり、分子機構や疾患への関与など解析が遅れているのが現状である。本研究ではオルガネラ特異的なFe2+蛍光プローブを活用し、Fe2+動態を可視化することで、VPS35を含む逆行性輸送経路異常とPD発症機序の因果関係を解明し、新規の創薬基盤を創出することである。前年度までにリソソームおよびゴルジ体特異的なFe2+プローブを活用して、siRNA法によりVPS35をノックダウンさせたSHSY5Y細胞において、リソソームへのFe2+の蓄積が起きたことを可視化することができた。また、リソソームへのFe2+異常蓄積をレトロマー安定化化合物であるR55処置することで改善することを明らかにした。本年度は、他のパーキンソン病原因遺伝子Cation-transporting ATPase 13A2 (ATP13A2)についても、Fe2+の蓄積が生じるかどうかを検討した。結果、ATP13A2ノックダウン細胞においてもリソソームへのFe2+異常蓄積を確認することができた。これらの結果は、パーキンソン病発症に細胞内の鉄ホメオスタシスの撹乱が関与する可能性を明らかにすることができた。
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