研究課題/領域番号 |
17K08313
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
丹野 孝一 東北医科薬科大学, 薬学部, 教授 (20207260)
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研究分担者 |
中川西 修 東北医科薬科大学, 薬学部, 准教授 (50296018)
根本 亙 東北医科薬科大学, 薬学部, 助手 (80635136)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 糖尿病性神経障害性疼痛 / アンジオテンシン (1-7) / Mas受容体 / p38 MAPK / 機械的アロデニィア / 熱性痛覚過敏 / ob/obマウス |
研究実績の概要 |
本研究では、糖尿病性神経障害性疼痛は脊髄内アンジオテンシン (Ang) 変換酵素 (ACE)-AngⅡ-AT1受容体系とACE2-Ang (1-7)-Mas受容体系に不均衡が生じ、それに伴いp38 MAPKシグナル経路の活性化に起因して発症するのではないかとの仮説を立て、この可能性について2型糖尿病モデルマウスとしてレプチン欠損マウスであるob/obマウスを使用し、行動および分子薬理学的観点から解明を行っている。これまで得られた研究結果を要約すると以下の通りである。 ①ob/obマウスの疼痛閾値を機械的アロデニィアおよび熱性痛覚過敏を指標に、それぞれvon Freyテストおよびプランターテストを用いて測定した結果、機械的アロデニィアは生後11-14週、熱性痛覚過敏は生後10-16週において観察された。 ②ob/obマウス(12週齢)で認められた機械的アロデニィアおよび熱性痛覚過敏はAng (1-7) の脊髄クモ膜下腔内投与によって有意に抑制され、この抑制作用はMas受容体拮抗薬で完全に拮抗された。 ③wild-type マウスと比較してob/obマウス(12週齢)の脊髄背側部で、Mas受容体発現量の有意な低下とp38 MAPKの著しいリン酸化が認められた。一方、アンジオテンシノーゲン、ACEおよびAT1受容体の発現量には違いは認められなかった。 これらの結果から、ob/obマウスでは脊髄ACE2-Ang (1-7)-Mas受容体系の低下に伴いACE-AngⅡ-AT1受容体系とACE2-Ang (1-7)-Mas受容体系に不均衡が生じ、それに伴いp38 MAPKシグナル経路の活性化に起因して糖尿病性神経障害性疼痛が発症する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究体制が整っており効率的に研究が実施されているため、順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度以降は以下に示す実験計画に従い研究を展開する。 ①脊髄背側部におけるACE2発現の検討および存在細胞種の特定:未処置のddY系マウスの脊髄背側部にACE2が発現しているのかをRT-PCR法およびウエスタン・ブロット法を用いて確認する。また、発現が確認された場合、抗NeuN、GFAPおよびIba-1抗体を用いて、それぞれ神経細胞、アストロサイトおよびミクログリアを免疫染色し、これらの神経・グリア細胞マーカーとACE2との蛍光二重染色を行い、共焦点顕微鏡を用いて存在細胞種を特定する。 ②ob/obマウスにおける脊髄内Ang系の変化についての検討:神経障害性疼痛が認められた12週齢のob/obマウスを用い、1) MapAnalyzer(免疫組織化学的測定法)により脊髄におけるACE2、Ang (1-7) および Mas受容体の分布の画像解析、2) LC/MS/MSによるAngⅡとAng (1-7) の同時分別定量、2) ACEおよびACE2活性の測定を行い、wild-type マウスと比較する。 ③ACE2活性化薬の有効性の検討:ob/obマウスが示すアロディニアや痛覚過敏に対するACE2活性化薬・ジミナゼンの有効性について検討する。また、有効性が認められた場合、その作用機序を脊髄背側部におけるp38 MAPKのリン酸化に対する効果から検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:旅費を全く使用しなかったため次年度使用額が生じた。 使用計画:今回の繰越額をob/obマウスおよび試薬・抗体の購入に充て使用する予定である。
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