研究課題
アルツハイマー病は進行性の神経変性疾患であり、症例が報告されてから約100年経た今も、発症・進行の機序には不明な部分が多く、根本的な治療方法は確立されていない。アルツハイマー病の病理学的特徴として、認知学習機能に重要であるコリン作動性ニューロンの脱落が挙げられる。アルツハイマー病治療薬の多くは、神経伝達物質のアセチルコリンを分解するアセチルコリンエステラーゼ(AChE)の活性を阻害することにより、認知機能障害を緩和することを目的として開発されたが、近年の研究から、アルツハイマー病治療薬の治療効果には、AChE阻害活性に加えて神経保護作用などの複数の異なる作用が関与する可能性が指摘されている。これまでに、ラット胎仔由来初代培養大脳皮質細胞において、3種のアルツハイマー病治療薬、ドネペジル・ガランタミン・タクリンが神経保護作用を有することを見出し、Phosphatidylinositol 3-kinase(PI3K) -Akt経路が神経保護作用の伝達に必要であることを明らかにした。さらに、Akt下流のGlycogen synthase kinase-3(GSK-3)の活性が、アルツハイマー病治療薬処置により制御されていることを発表し、GSKがアルツハイマー病治療薬の神経保護作用に重要であることも明らかにしている。本研究では、アルツハイマー病治療薬の神経保護作用の作用点を明らかにするため、まず、マウス脳組織とラット胎仔由来初代培養大脳皮質細胞においてタウの過剰リン酸化が惹起される条件を探索し、低温負荷処置によりタウのリン酸化が惹起される評価系を構築した。そこで、これらの評価系を用いて、低温負荷により惹起されるタウのリン酸化に対するアルツハイマー病治療薬ドネペジルの作用について検討したところ、ドネペジルがタウのリン酸化を抑制することが示唆された。
すべて 2019
すべて 学会発表 (3件)