研究課題/領域番号 |
17K08326
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
奈邉 健 摂南大学, 薬学部, 教授 (40228078)
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研究分担者 |
松田 将也 摂南大学, 薬学部, 助教 (30783005)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | インターロイキン-33 / 気管支喘息 / アレルギー / 気道炎症 / マクロファージ / IgG / Fcγ受容体 |
研究実績の概要 |
インターロイキン (IL)-33は、気道組織において上皮細胞や免疫細胞から産生され難治性喘息の病態に関与すると考えられているが、IL-33の産生機序や病態との関連についての詳細は不明である。本研究は、マウス喘息モデルを用い、IL-33産生の免疫学的機序を明らかにすることを第一目的とする。これまでに、アレルギー状態の(感作された)個体の肺に抗原が侵入した際のIL-33産生には、①自然免疫性と獲得免疫性の機序が存在すること、②後者には肥満細胞/好塩基球およびTh2細胞による抗原認識機構は関与しないこと、③肺胞マクロファージによるアレルギー性の抗原の取り込みが関与することを明らかにしてきた。これらを背景に、平成30年度は、新たに以下のことを明らかにした。(1)感作個体の肺に抗原を暴露した場合、肺胞マクロファージは細胞表面のFcγ受容体を介して抗原を取り込むことを明らかにした。一方、(2)感作個体から単離した肺細胞は、in vitro系において特異抗原を取り込まなかったが、感作個体由来の血清(抗原特異的IgG抗体や活性化補体を含む)の添加により、感作肺細胞は顕著に特異抗原を取り込むことを明らかにした。また、(3)免疫組織学的解析により、肺における主たるIL-33産生細胞は、気管支の上皮細胞および平滑筋細胞、ならびに肺胞マクロファージであることを明らかにした。以上の成績より、IL-33産生の免疫学的機序には、侵入した抗原が可溶性抗原特異的IgG抗体と結合する抗原認識機構が関与し、この抗原抗体複合体がマクロファージ上のFcγ受容体を介して本細胞に取り込まれる機序が存在することが強く示唆された。この機序を介して、肺胞マクロファージ自身、ならびにその他の細胞が間接的に活性化されIL-33が産生されることが示唆された。以上の成績は、IL-33を標的とした新しい抗喘息薬の創出に有用である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、本研究の第一目的であるIL-33産生の免疫学的機序を明らかにすることができた。すなわち、気管支喘息の肺におけるIL-33の産生機序には、自然免疫性の機序のみならず獲得免疫性の機序が存在し、その獲得免疫性の機序における特異抗原の認識機構ならびにIL-33産生細胞の候補を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の第二の目的は、IL-33の難治性喘息の病態における役割を解析することである。これまでに難治性喘息の病態においては、IL-33の生物学的反応がステロイドによって抑制されない(ステロイド抵抗性である)ことが報告されてきた(Kabata et al., Nat Commun. 2013;4:2675)。このことは、IL-33がステロイド抵抗性喘息の鍵となる分子である可能性を示唆するものである。一方、研究代表者らは、別の研究において、ステロイド抵抗性およびステロイド感受性の2つのマウス喘息モデルを確立しつつある(奈邉ら、第68回日本薬学会近畿支部、第68回日本薬理学会年会、日本薬学会第139年会、論文未発表)。今後、これら2つの喘息モデルにおけるIL-33の産生および作用を比較、解析する。すなわち、(1)両モデルにおけるIL-33産生量を比較し、それらに及ぼすステロイド性抗炎症薬の効果を検討する。(2)両モデルにIL-33を気管内投与した場合の反応(IL-5産生、好酸球浸潤、気道過敏性)を検討し、それに及ぼすステロイド性抗炎症薬の効果を検討する。(3)両モデルにおいて、IL-33が作用する細胞である2型自然リンパ球(ILC2)の動態を解析するとともに、単離したILC2のIL-33に対する反応性におけるステロイド感受性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:in vivoマウスモデルをさらに実施する必要があるため 使用計画:ステロイド抵抗性マウスモデルを用いた解析を行うため、BALB/cマウス、各種サイトカインの測定キット、フローサイトメーター用抗体、気道過敏性測定用の機器(FlexiVent)のメンテナンス費用等を支出する計画である。
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