研究課題
アストロサイトがシナプス機能を制御することは既に分かっている。しかし、アストロサイトの密度が変化した際のシナプス動態は、未知な部分が多い。例えば、アストロサイト集合体の規模(密度)によって、1)ニューロンがシナプスを投射する場所(位置)は影響を受けるのか、2)個々のシナプスにおける開口放出メカニズムの変化はどうなっているのか、3)その生理的意義は何か、などである。よって本年度は、1)に着目し、実験を遂行した。生後0日齢ICRマウスから大脳皮質を摘出し、ニューロンの足場となるグリア細胞:アストロサイトを培養した。アストロサイトの培養法は、従来の手順に準拠した。次に、培養アストロサイトを低密度ならびに高密度で区分培養し、生後0日齢ICRマウスの海馬ニューロンと共培養した。単一ニューロンは、自己にシナプスを形成しながら与えられた領域内で成長するので、シナプス形成が安定する2週間をニューロンの培養期間とした。具体的には、オータプスニューロンの樹状突起はMAP2抗体、興奮性シナプスはVGLUT1抗体を用いて免疫染色し、共焦点顕微鏡にて三次元(z-stack)解析した。樹状突起の伸展と形態は、MAP2イメージにおける細胞体を中心に同心円を等間隔で描き、それぞれの同心円と交差する樹状突起の回数を計測して定量した(Sholl analysis法)。シナプス数とサイズは、VGLUT1イメージをガウシアンブラー処理(ノイズ除去)してS/N比を疑似的に増加させたイメージから定量した。
2: おおむね順調に進展している
『マイクロ培養デバイス』を用いて、密度の異なるマウス大脳皮質アストロサイトと単一ニューロンを共培養したオータプス標本を作製できた。また、興奮性シナプス (VGLUT1抗体)、樹状突起(MAP2抗体)を免疫染色し、個々のシナプスの投射位置とシナプスの数の変化を解析できた。
異なるアストロサイト密度の環境下において海馬CA1単一ニューロンを共培養し、培養2週間後のシナプス伝達を、パッチクランプ法にてリアルタイムに解析する。次に、シナプス小胞に蛍光色素のFM1-43を活動電位依存的に取り込ませ、タイムラプスイメージング法にてシナプス小胞の開口放出を蛍光観察する。更には、パッチ電極から電気刺激を与えた時のシナプス開口放出応答をパッチクランプ法でモニターしながら、シナプス小胞に取り込まれたFM1-43の蛍光退色の同時測定を行う。同時測定実験について、共同研究先のアイオワ大学准教授のCharles Harataラボに大学院生1名を派遣し(6月~8月)、集中的に実験を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
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