研究課題
アストロサイト集合体の規模(密度)によって、1)ニューロンがシナプスを投射する場所(位置)は影響を受けるのか、2)個々のシナプスにおける開口放出メカニズムの変化はどうなっているのか、3)その生理的意義は何か、など不明な点が多い。昨年度は、1)に着目し、実験を遂行した。本年度は、2)に重点を絞り電気生理学的に検討した。また、共同研究先のアイオワ大学准教授のCharles Harataラボに大学院生1名を予定通り派遣し(6月~8月)、光学的なアドバイスなどを得た。生後0日齢ICRマウスから大脳皮質を摘出し、ニューロンの足場となるグリア細胞:アストロサイトを培養した。アストロサイトの培養法は、従来の手順に準拠した。次に、培養アストロサイトを低密度ならびに高密度で区分培養し、生後0日齢ICRマウスの海馬ニューロンと共培養した。単一ニューロンは、自己にシナプスを形成しながら与えられた領域内で成長するので、シナプス形成が安定する2週間をニューロンの培養期間とした。結果、アストロサイトが高密度になることにより、シナプス開口放出確率は上昇することが明らかとなった。一方で、1)についてさらに詳しくシナプス分布について解析したところ、細胞体からの距離によってアクティブシナプスの分布に不思議な特徴があることが判明した。そこでSholl analysis法を用いた同心円を利用することにより、一定区画におけるシナプス分布の定量解析法を独自開発した。我々はこれを、「ドーナツ解析」と名付けた。この解析法については、現在論文を執筆中である。
1: 当初の計画以上に進展している
パッチクランプ法によるシナプス解析は、当初の予定通りに進んだ。また、共同研究先のアイオワ大学准教授のCharles Harataラボに大学院生1名を予定通り派遣し(6月~8月)、光学的なアドバイスなどを得た。習得した光学的ノウハウの結果、昨年度実施した形態学的解析において、アクティブシナプスの分布には独特な特徴がある事が判明した。これを具体的に定量するための解析法が新たに独自開発できたので、当初の予定以上の実験成果が得られていると実感している。
パッチクランプ法で得られた結果と、ドーナツ解析で得られた結果の相関性を明らかにする必要がある。このことは、本研究成果の生理学的意義を問うものであり、最終年度のうちに論文にまとめる所存である。
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