研究課題/領域番号 |
17K08329
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
古賀 允久 福岡大学, 薬学部, 助教 (60570801)
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研究分担者 |
片岡 泰文 福岡大学, 薬学部, 教授 (70136513)
金岡 祐輝 福岡大学, 薬学部, 助教 (80761246) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バレニクリン / 慢性閉塞性肺疾患 |
研究実績の概要 |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は治癒が困難であり、根治的な治療法がない。我々は、これまでにα4β2 nAChR部分作動薬およびα7 nAChR完全作動薬である禁煙補助薬バレニクリンが動脈硬化巣の形成を促進させるという有害作用を明らかにした。一方、porcine pancreatic elastase (PPE)噴霧によるCOPDモデルマウスにおいて、バレニクリンが肺障害を保護するという独自の予備的知見を得た。そこで、バレニクリンによる「動脈硬化巣増悪作用」と「COPD病態下の肺保護作用」の相違を明らかにし、バレニクリンによるCOPDの新規治療効果を検証する。 そこで、本年度はC57BL/6マウスにPPE 2Uの気管内噴霧により、COPDモデルマウスを作製し、作製したこのモデルマウスに、vehicle (PBS) 、バレニクリンおよびα7 nAChR拮抗薬であるmethyllycaconitine (MLA)+バレニクリンを5日間および21日間投与し、評価した。 PPE (2U)噴霧5日目後、21日目後、いずれにおいても肺胞径は拡大しており、バレニクリン投与により、PPEによる肺胞径の拡大が有意に抑制された。一方、MLA併用により、バレニクリンによる、その抑制効果は阻害された。また、PPE噴霧後5日間の気管支洗浄液(BALF)中の炎症性細胞(マクロファージ、好中球、T細胞)数はPPE噴霧で増加しており、バレニクリン投与により、BALF中のその細胞数は有意に減少した。一方で、MLA併用により、バレニクリンによる細胞数減少効果は阻害された。 以上より、バレニクリンはα7 nAChRを介して、PPE噴霧によるBALF中の炎症性細胞の浸潤を抑制することにより、肺胞径の拡大を抑制することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、モデルマウスを使用した動物実験により、PPE噴霧による肺傷害に対して、バレニクリンが肺を保護することを明らかにした。その機序としてα7 nAChRを介したバレニクリンの作用が、BALF中の炎症性細胞の浸潤を抑制することにより、炎症性細胞による肺傷害による肺胞径の拡大が抑制されたと考えられる。この結果については、論文を投稿中あり、順調に進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、動物実験でバレニクリンがPPEによる肺傷害を保護することを明らかにした。一方で、以前にバレニクリンが動脈硬化巣の形成を促進させるという有害作用を明らかにした。今後は、肺(COPD)-血管(動脈硬化症)におけるバレニクリンの作用の相違を明らかにしていく。 まず両疾患において重要な役を担っているマクロファージに着目し、動脈硬化症の研究で多用される培養マクロファージ細胞(RAW細胞)および培養肺胞マクロファージ(MH-S)の細胞を培養し、細胞実験により各細胞間におけるバレニクリンの作用およびその機序を明らかにする予定である。具体的には、各細胞間における炎症性メディエーターの発現、nAChRの発現の相違を比較検討する。
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