研究課題/領域番号 |
17K08329
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
古賀 允久 福岡大学, 薬学部, 助教 (60570801)
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研究分担者 |
片岡 泰文 福岡大学, 薬学部, 教授 (70136513)
金岡 祐輝 福岡大学, 薬学部, 助教 (80761246) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バレニクリン / 慢性閉塞性肺疾患 / 肺胞マクロファージ |
研究実績の概要 |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、治癒が困難であり、根治的な治療法はない。我々は、本年度、porcine pancreatic elastase (PPE)気管内噴霧によるCOPDモデルマウスにおいて、禁煙補助薬バレニクリンがa7 nicotinic acetylcholine receptor (nAChR)を介してPPEによる肺障害を抑制することを報告した(Koga et al., J Pharmacol Sci. 2018)。さらに、バレニクリンが肺洗浄液(BALF)中のマクロファージ、好中球、T細胞の細胞数を減少させることを明らかにした。 osteopontin (OPN)はマクロファージ、活性T細胞、上皮細胞、および平滑筋細胞において炎症過程で増加する骨基質タンパク質であり、炎症部においてマクロファージ、T細胞を活性化せる。またCOPD患者の肺および喀痰中において増加するという報告がある。そこで、バレニクリンによる肺保護作用の機序を明らかにするために、MH-S細胞(肺胞マクロファージ)を用いて、OPNに着目して実験を行った。MH-S細胞にバレニクリンを処理し、OPNのタンパクおよびmRNA発現をそれぞれウエスタンブロット法、リアルタイムPCR法で評価した。その結果、24時間のバレニクリン処理により、濃度依存的(0, 0.1, 1, 10 uM)に、OPNのタンパクおよびmRNA発現が減少した。さらにa7 nAChR拮抗薬であるmethyllycaconitine (MLA)処理により、バレニクリンによるOPN発現の減少は阻害された。以上より、バレニクリンはa7 nAChRを介して肺胞マクロファージのOPN発現を減少させることで、肺における炎症を抑制し、肺を保護する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、PPE噴霧によるCOPDモデルマウスにおいて、a7 nAChRを介したバレニクリンの作用により、BALF中の炎症性細胞の浸潤が抑制され、PPEによる肺胞径拡大を抑制することを報告した(Koga et al., J Pharmacol Sci. 2018)。さらに、肺胞マクロファージにおいて、バレニクリンがOPN発現を減少させることで肺を保護する可能性があることが示唆された。 したがって、動物実験、細胞実験において、バレニクリンによる肺保護作用の機序を明らかにしており、おおむね順調に進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
動物実験において、バレニクリンがPPE誘発による肺障害(COPD)を保護することを明らかにした。その一方で、以前、バレニクリンが動脈硬化巣の形成を促進する有害作用を明らかにしている。そこで、COPDと動脈硬化症の両疾患において、重要な役割を担うマクロファージを用いて、これらの疾患におけるバレニクリンの作用の相違を明らかにする予定である。 培養肺胞マクロファージ(MH-S細胞)において、COPD病態下で増加するOPNの発現をバレニクリンが抑制することを明らかにした。よって、動脈硬化症などの研究で多用されている培養マクロファージ(RAW細胞)を用いて、バレニクリンによるOPN発現に及ぼす影響をまずは明らかにし、MH-S細胞とのバレニクリンの作用の相違を検証する。さらに、各細胞間における炎症性メディエーターやnAChRの発現を評価する予定である。
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