H2SとH2Snによる標的タンパクの制御 各組織の結合型イオウ量を3MSTノックアウトマウスと野生型マウスとの間で比較した。各組織ホモジネートに還元剤DTT存在下において、結合型イオウからH2Sを発生させガスクロマトグラフィーで測定した。以前、3MSTを過剰発現した細胞では、コントロール細胞に比較して結合型イオウレベルが有意に高かった。これは、3MSTによって合成されたH2SやH2Snがタンパクを過硫化した結果と考えられる。また、3MSTの活性部位247番目のcysteineをserineに置換したミュータント3MSTでは、H2Sの生合成もほとんどなく、このミュータントを過剰発現した細胞では、結合型イオウレベルがコントロールと変わらなかった。これらのことから各組織において、3MSTノックアウトマウスでは野生型マウスに比べ、結合型イオウレベルが低いことが予想されたが、実際に測定を行ったところ、予想は正しかった。 H2SとH2Snとはともに3MSTによって生合成されるが、このうちH2Sは標的タンパクの酸化されたcysteine残基Cys-SOHやNOによって酸化されたCys-SNOを過硫化し、一方、H2Snは酸化されていないcysteine残基を過硫化する。これらのメカニズムを申請者らが見出したTRPA1チャネルを使って明らかにした。すなわち、Cys-SOHについては、あらかじめH2O2投与によって、また、Cys-SNOについてはNOドナーを投与しておく。その後、H2Sを投与したところ、TRPA1チャネルが反応した。現在論文発表準備中である。
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