研究実績の概要 |
今年度の研究では、植物乳酸菌12株の培養液上清について、腸管上皮細胞のIL-8阻害活性を評価した。その結果、マタタビの花から分離したLb. reuteri BM53-1、梨から分離したLb. plantarum SN35Nの培養上清にサルモネラ菌及び黄色ブドウ球菌の感染で引き起こされた腸管の炎症反応を有意に制御する物質が産生されてることを見出した。また、乳酸菌分泌する乳酸が抗菌作用を示すことから、乳酸菌培養液上清のpHを7.0に調整した上で、本活性を評価した。その結果、Lb. plantarum SN35N株のIL-8阻害物質は、本菌株がつくる細胞外多糖体である可能性が高い。一方、Lb. reuteri BM53-1は黄色ブドウ球菌の産生する毒素 (TSST-1) に対する阻害物質「TS-inhibitor」をつくるが、その物質がIL-8の発現を抑制することを見出した。 また、Lb. reuteri BM53-1を9種類の果汁で培養した結果, オレンジ果汁培地でのみ, 培養液上清中に緑膿菌の増殖阻害活性が確認された。この抗菌物質は, 高い耐熱性を示し, かつ, 低分子量の化合物であると推測している。また, 有機溶媒を用いて活性物質の抽出を行った結果, 親水性であることが分かった。産生量と同量の酢酸と比べ、オレンジ発酵液のエキスには緑膿菌の毒素であるピオシアニンの産生を阻害する物質が存在することが分かった。
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