研究実績の概要 |
今年度は、黄色ブドウ球菌の毒素TSST-1を阻害する機能を持つ植物乳酸菌Lactobacillus reuteri BM53-1株の全ゲノムシークエンス分析を行った。Lb. reuteri BM53-1株のゲノムは総塩基数2.033.877bp(GC含有率38.0%)であり、得られた配列について解析を行った結果Protein coding sequence (CDS)数は1,891であった。 黄色ブドウ球菌には, 2つのクォラムセンシングシステム (SQS1及び2) の存在が報告されている。そのうちSQS2は遺伝子調節系であるagr (accessory gene regulatory) の生産物で構成される。Agrが活性化されると, RNAIIおよびRNAIIIが産生され, そのRNAIIIが TSST-1の発現を誘導する。定量RT-PCRの結果, Lb. reuteri BM53-1株の産生するTSST-1阻害物質はtstの発現を抑制すると共に, 黄色ブドウ球菌のクォラムセンシング機構に関わるいくつかの遺伝子 (agrA, agrB, 及びsrrAなど) の発現を低下させることがわかった。また、Lb. reuteri BM53-1株は, S. typhimurium や C. jejuniの細胞付着性を阻害する物質をつくることも明らかになった。去年度に続き、S. typhimurium や C. jejuniの生菌体により刺激された腸管上皮細胞から産生される炎症性サイトカインTNF-α、MCP-1に対する阻害活性について検討した。その結果、TSST-1阻害物質はMCP-1対して有意な阻害活性を示した。
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