研究課題/領域番号 |
17K08336
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
松浪 勝義 広島大学, 医歯薬保健学研究科(薬), 教授 (70379890)
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研究分担者 |
大塚 英昭 安田女子大学, 薬学部, 教授 (00107385)
杉本 幸子 広島大学, 医歯薬保健学研究科(薬), 准教授 (60549012)
山野 喜 広島大学, 医歯薬保健学研究科(薬), 助教 (70650597)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マダガスカル / 生物活性 / 天然物化学 |
研究実績の概要 |
マダガスカルから入手したニシキギ科植物Mystroxylon aethiopicumは現地で胃の不調に対して用いられる植物である。化学成分に関する研究が十分でないことから、今回、詳細に検討した結果、葉部のメタノール抽出物から2種の新規アガロフラン型セスキテルペンを単離し、その化学構造を決定した。また、沖縄で採取したカラスザンショウ(Zanthoxylum ailanthoides)の葉部について含有成分の解析を試みたところ、7つの新規配糖体を見出し、その化学構造を改良Mosher法等により絶対配置を含めて明らかにした。同じく沖縄で採取したオオシマコバンノキ(Breynia officinalis)は、抽出物にチロシナーゼ阻害活性が見られたことから活性を指標に分画を進めたところ、4つの新規アシル化ヒドロキノン配糖体を単離した。その化学構造は1D および2D NMR、HR-ESI-MSなどによる解析により決定した。次に、その他に単離した既知化合物とともにin vitro チロシナーゼ阻害活性を評価したところ、1つの新規化合物に比較的強い活性が見いだされたことから、この化合物がオオシマコバンノキの抽出物に見られた活性の少なくとも一部を担うものであることが明らかになった。さらに、この化合物についてゼブラフィッシュを用いたin vivo melanogenesis 阻害活性試験を行った。すなわち、96 well plateに分注したゼブラフィッシュ初期胚に対して、種々の濃度の化合物を投与し、顕鏡下でメラニン合成阻害活性を、また、in vivo毒性に関してはGFPラベルした血管網のパターンを無処置群と比較することで評価した。その結果、本研究で得られた新規化合物はin vivoモデルにおいても有用なメラニン生成抑制剤になりうる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マダガスカル産ニシキギ科植物Mystroxylon aethiopicumに関する成果は既に日本生薬学会第64回年会 (千葉)(2017.9)にて「Mystroxylon aethiopicum葉部の成分探索」のタイトルで学会発表を行い、カラスザンショウ(Zanthoxylum ailanthoides)については「Aliphatic glucoside, zanthoionic acid and megastigmane glucosides: zanthoionosides A-E from the leaves of Zanthoxylum ailanthoides.」として Chem Pharm Bull (Tokyo). 2017;65(8):754-761で国際学術誌にて報告したほか、オオシマコバンノキ(Breynia officinalis)についても「Phenolic compounds from the leaves of Breynia officinalis and their tyrosinase and melanogenesis inhibitory activities」としてJournal of Natural Medicines (2018), 72(1), 12-19にて報告している。また、そのほかに、アカハダノキ(Archidendron lucidum)のヒトがん細胞に対する活性成分に関する研究として「沖縄産植物アカハダノキのがん細胞増殖抑制成分の探索」の演題で第56回日本薬学会中国四国支部大会(徳島)(2017.10)や「ハシカンボク(Bredia hirsta)地上部の抗Leishmania活性を指標とした成分探索」として第138回年会日本薬学会 (金沢)(2018.3)などを学会報告しているなど順調に研究成果を上げているため。
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今後の研究の推進方策 |
マダガスカル産植物ライブラリーに対して、ジカ熱などの昆虫媒介性感染症のベクター昆虫であるヒトスジシマカ(一筋縞蚊: Aedes albopictus)の幼虫を用いた殺蚊幼虫活性試験で活性が見いだされた植物2種について現在、検討を進めている、すでに新規セスキテルペンを活性成分として見出しており、今後さらに検討を加えることでより多数の活性新規化合物を発見できると考えている。また、アカハダノキの活性成分やハシカンボクの活性成分に関してさらに含有成分の詳細な検討を進めるとともに、タンパク質の変動解析などを加え、活性発現メカニズムの一旦を解明することを予定している。それ以外にも、複数のマダガスカル産植物サンプルの成分研究や沖縄産亜熱帯植物に対する検討も並行して行っているので、今後、順次、単離精製できた化合物について生物活性や化学構造を明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほとんどの予算は研究計画通りに使用したが、研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため、当初の見込み額と執行額は異なっているが、少額であり、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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備考 |
リンク先に業績集あり
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