研究実績の概要 |
本研究では、植物由来の特異な化学構造の抗HIV活性メロテルペンをテンプレートとしたライブラリを作成し、その活性評価と構造活性相関の検討による抗HIV薬リードの開発 を目的としている。化学構造の多様性をもつライブラリを作成するため、薬用植物に含まれるメロテルペンの探索を行うとともに、植物や海洋生物に含まれる天然物を前駆物質としたメロテルペンの合成を検討する。 具体的には、中国雲南省および広西省、モンゴル、ウズベキスタン、北海道ならびに徳島県で採集した植物、徳島県で栽培した植物、沖縄県および徳島県で採取した海綿動物を素材として、メロテルペンならびメロテルペン前駆物質となる天然物の探索を行なった。 最終年度は、メロテルペンの探索ならびにメロテルペン合成を行うとともに、ライブラリの抗HIV活性を評価した。この結果、オトギリソウ科植物Hypericum ascyronの根から単離したメロテルペンhyperdioxane Aに抗HIV活性を見い出した。Hyperdioxane Aは、特異な七環性構造をもつ新規メロテルペンであり、エレモフィラン型セスキテルペンとジベンゾ-1,4-ジオキサン誘導体から生合成されると考えられる。同時に単離したhyerdioxane Aのセスキテルペン部分とジベンゾ-1,4-ジオキサン部分に相当する天然物には、抗HIV活性がみられなかったことから、hyperdioxane Aの特異な化学構造が抗HIV活性に関与することが示唆された。Hypericum ascyronの根からはhyperdioxane Aに加えて、新規メロテルペンとしてhypascyrin A-Eも単離し、構造を明らかにした。
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