研究課題
ヒトの健康維持に貢献するとされる食品中のポリフェノールがどのようにして植物体内で作られているのか、また食品加工時にどのように変化しているのかはよく分かっていない。最終年度では紅茶ポリフェノールとエラジタンニン類の生成機構について化学的検討を継続して以下の様な知見を得た。紅茶は世界茶生産の8割を占め、人が水の次に多く飲む飲料とされている。紅茶ポリフェノールは緑茶カテキンが酵素酸化されて生成するが、最も量が多い紅茶ポリフェノールは比較的分子量が大きい水溶性赤色色素テアルビジンである。紅茶を多く飲むイギリスでは食品から摂取する総ポリフェノールの半分近くをテアルビジンが占めるとされる。しかし、テアルビジンの構造や生成機構は未だ不明である。我々はモデル酸化実験の結果や紅茶を抽出分離することにより、テアルビジンが大きく2つに分けられることを明らかにし、比較的親水性のテアルビジンはピロガロール型カテキンから主に生成し、比較的疎水性のテアルビジンはピロガロール型カテキンとカテコール型カテキンの混合酸化によって生成する証拠を得た。いずれもこれまで重要とは考えられていなかったガロイル基とB環とのカップリングがテアルビジン生成に重要であると推定している。今後さらに生成機構を解明していく予定である。エラジタンニンの主要アシル基であるヘキサヒドロキシジフェノイル(HHDP基)はガロイル基の酸化カップリングによって生成するとされてたが、我々はガロイル基の酸化カップリングによってまずデヒドロHHDP(DHHDP)基が生成し、それが還元されてHHDP基ができる機構を提唱した。これまで、シイ、ナンキンハゼ、アカシデ、クマシデで証拠を得たほか、ガロイル基のバイオミメティック酸化によっても上記の反応が起こることを確認した。これによりエラジタンニンの新たな生合成機構の存在が明らかになった。
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