研究課題/領域番号 |
17K08342
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
中島 琢自 北里大学, 北里生命科学研究所, 特任准教授 (40526216)
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研究分担者 |
松本 厚子 北里大学, 感染制御科学府, 准教授 (20300759)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エルゴステロール / シリカゲル樹脂 / 放線菌 / 二次代謝産物 |
研究実績の概要 |
真菌の細胞膜主要成分であるエルゴステロールを標的分子とする新たな評価系を構築し、北里微生物ライブラリーから新規抗真菌剤を探索することを目的とする。Amphotericin Bは、その高い有効性から50年以上、深在性真菌症治療薬のゴールドスタンダードとして使用されてきた。しかし、動物細胞膜の主要脂質成分であるコレステロールとの選択性は完全なものではなく、腎毒性など重篤な副作用を発現する場合もある。エルゴステロールと親和性の高い低分子化合物を探索し、安全性の高い真菌症薬の候補化合物を見いだす。本研究は放線菌培養液抽出物から生物活性ではなく、エルゴステロール結合樹脂を利用し、エルゴステロールと特異的に結合する化合物を探索することを目的に進めてきた。その結果、ポリエン系化合物以外の化合物もエルゴステロールーシリカゲル樹脂に結合し、メタノールで溶出されてくることがわかってきた。その特徴として、炭素、水素、酸素からなる化合物だけでなく、窒素を含む化合物が検出されることがわかった。エルゴステロールーシリカゲル樹脂を用いて新規物質を探索することを目的とした。 放線菌の培養液を探索源に用い、スクリーニングを進めた結果、Amycolatopsis sp. K16-0194が生産するdyprimicin Bがエルゴステロールーシリカゲル樹脂に結合することがわかった。精製し、構造解析後、dyprimicin Bはジピリジン骨格を有するユニークな二次代謝産物であることがわかった。また、エルゴステロールーシリカゲル樹脂に結合しない同骨格のdyprimicin Aが取得できた。dyprimicin AおよびBの構造的違いはAがカルボン酸、Bがアミドであった。エルゴステロールーシリカゲル樹脂への結合はdyprimicin Bが保有するアミドが影響していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
放線菌培養液抽出物210サンプルを処理し、LC/MSで解析した結果、21既知化合物が同定された。様々な骨格の化合物が検出されているが、同じ官能基を有する化合物も見出されており、興味が持たれる結果となった。また、抗真菌活性が報告されていない化合物も検出された。 放線菌培養液からSi-ES樹脂を用いて新規物質の探索をPC screeningで行った。新規物質と推定された化合物の中からAmycolatopsis sp. K16-0194が生産するK16-0194AおよびBに注目した。本菌株の培養液抽出物には19分(K16-0194 A)および20分(K16-0194 B)あたりに溶出される2つの化合物が含まれており、Si-ES樹脂にはK16-0194 Bがエルゴステロールーシリカゲル樹脂に結合した。 K16-0194AおよびBを精製し、構造解析の結果、両化合物はピリジンが2つ結合したジピリジン骨格を有していた。K16-0194AおよびBの構造違いはカルボン酸(A)およびアミド(B)であった。 以上の結果より、Amycolatopsis sp. K16-0194が生産するSi-ES樹脂結合物質はジピリジン骨格を有するアミド体であり、カルボン酸に変わることでSi-ES樹脂には結合しなくなることがわかった。K16-0194AおよびBはその骨格からdipyrimicin AおよびBと命名した。Dipyrimicin Aは抗菌・抗真菌および細胞毒性が見られたが、dipyrimicin Bは肺がん由来H1299細胞への細胞毒性以外は活性低下が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
Amycolatopsis sp. K16-0194が生産するdyprimicinは生産培養を重ねるにに従い、その生産性は低下し、最終的に生産しなくなった。そこで、培地成分の交換や削除などの生産培地の検討を行いう。得られたdiprymicinを様々な生物活性の評価を行い、有用な生物活性を見いだしていく。 エルゴステロールーシリカゲル樹脂を用いたスクリーニングを継続し、新規物質を見いだしていく予定である。
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