研究課題/領域番号 |
17K08343
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
岩月 正人 北里大学, 感染制御科学府, 准教授 (70353464)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マラリア / 新規ペプチド化合物 / 糸状菌代謝産物 / リーシュマニア |
研究実績の概要 |
本申請では抗マラリア原虫活性および抗リーシュマニア原虫活性を指標に微生物培養液のスクリーニングを行いマラリアおよびリーシュマニア症治療薬開発のためのシード化合物(バックアップ)を発見することを目的として いる。【方法】スクリーニングは高病原性の熱帯熱マラリア原虫の多剤耐性K1株、内臓リーシュマニア原虫株およびヒト正常線維芽細胞MRC-5を用いて行った。1次スク リーニングで抗原虫活性を示したサンプルについて2次スクリーニングでMRC-5に対する細胞毒性を評価することで、原虫に対する選択毒性を有するサンプルを選択した。2次スクリーニングを通過したサンプルは再培養を行い、抗原虫活性を指標にして各種クロマトグフィーで精製を行い、得られた活性物質はNMR、MS等の機器分析により化学構造を明らかにした。【結果】上記のスクリーニングで選択した新種1糸状菌株について検討を行い、活性物質として2種類の新規ペプチド化合物を単離した。各種機器分析およびフラグメント解析の結果、両物質が異常アミノ酸を含む5つのアミノ酸ユニットを含む直鎖状リポペプチドであることを明らかにした。さらに完全酸加水分解物の FDLA修飾体を用いた改良Marfey法およびLC/CDスペクトル解析により、アミノ酸残基の絶対立体配置を決定した。これら新規化合物の抗マラリア活性はいずれも サブマイクロオーダーで多剤耐性マラリア原虫の増殖を阻害し、ヒト正常線維芽細胞に対する毒性は抗マラリア活性と比べて約30-150倍低いことが明らかとなった。これらは新規物質のためkozuoeotin AおよびBと命名して関連する内容を纏めて原著論文1報で報告を行った。また抗リーシュマニア原虫活性評価系についても単品化合物ライブラリーを用いたスクリーニングを行い、既知2化合物が皮膚リーシュマニア原虫に対して活性を示すことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請では抗マラリア原虫活性および抗リーシュマニア原虫活性を指標に微生物培養液のスクリーニングを行い、「薬剤耐性原虫にも有効」で「安全域が広く」 「安価に供給可能」かつ「経口投与が可能」なマラリアおよびリーシュマニア症治療薬開発のためのシード化合物(バックアップ)を発見することを目的に、 (1) in vitro抗原虫活性評価系での微生物培養液のスクリーニング、(2) 活性物質の発酵生産および単離、(3)活性物質の構造解析、(4)有望な化合物の大量取 得、(5) 原虫感染マウスモデルを用いたin vivo抗原虫活性評価を行う。次年度以降も今年度と同様に(1)-(4)を継続しつつ(5)も実施する。 初年度で既にスクリーニングで選択した新種1糸状菌株から抗マラリア原虫活性物質として2種類の新規ペプチド化合物を単離し、その構造を決定することに成功している。また今年度はその成果を纏めて原著論文1報を報告した。抗リーシュマニア原虫活性評価系についても単品化合物ライブラリーを用いたスクリーニングを開始しており当初の計画通り順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り最終年度は(1) in vitro抗原虫活性評価系での微生物培養液のスクリーニング、(2) 活性物質の発酵生産および単離、(3)活性物質の構造解析、(4) 有望な化合物の大量取得を実施しながら有望な化合物については(5) 原虫感染マウスモデルを用いたin vivo抗原虫活性評価を行う。 その候補として初年度に発見に成功した新種1糸状菌株からの抗マラリア原虫活性新規ペプチド2化合物を発酵法により、(4)大量に取得し(5) 原虫感染マウス モデルを用いたin vivo抗原虫活性評価を行う予定である。 また抗リーシュマニア原虫活性評価系についても単品化合物ライブラリーでヒット化合物から(4)(5)に進める有望な化合物を1化合物以上選択済みである。
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