研究課題
インドネシアから新たに微生物(糸状菌)を輸入して、複数の培地、培養方法で培養し、約400種の培養液サンプルを調製した。これを用いて、赤痢アメーバのNAD kinaseを阻害するサンプルのスクリーニングを行った。スクリーニングはNADPH-dependent oxidoreductaseを組み合わせたカップリングアッセイ方法を用いて行った。この探索源からはヒットサンプルは得られなかった。並行して、日本産またはインドネシア産微生物(放線菌・糸状菌)の培養液約3,500サンプルを用いて殺赤痢アメーバ活性を示すサンプルをスクリーニングした。ヒト正常細胞に対して毒性を示さず、赤痢アメーバに対して殺虫活性を選択的に示すサンプルを75サンプル見出した。殺虫活性を示す放線菌培養液の殆どに、様々な生物活性を持つグルタルイミド化合物cycloheximideが殺赤痢アメーバ化合物として含まれることがわかった。本年度cycloheximideを含まない放線菌培養液を選択し、放線菌の生産する殺赤痢アメーバ化合物としてchartreucinを同定した。本化合物の殺赤痢アメーバ活性は新規の知見だが、活性はIC50値が約100 microMと強くはなかった。一方で糸状菌培養液からは、殺赤痢アメーバ化合物としてtenuazonic acidを単離した。Tenuazonic acidは複数の属の糸状菌が生産するマイコトキシンであり、真核生物に毒性を示す。ヒト細胞に対する毒性と比較したところ、赤痢アメーバ細胞に対しては1/10の濃度(IC50値約50 microM)で毒性を示し、赤痢アメーバ選択的な活性を確認できた。インドネシア産微生物培養液から見出した殺赤痢アメーバ活性を示す化合物についてはアジア国際菌学会において、殺赤痢アメーバ化合物に関して得られた成果はインドネシアで開催された国際シンポジウムで発表した。
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