研究実績の概要 |
抗HIV薬の多剤併用療法はHIV増殖を抑制するが根絶することはできず、新規抗HIV薬創製が社会から求められている。本年度においては、前年度に引き続き、ジンチョウゲ科植物ジンチョウゲの成分研究を行ったとともに、新たに、ジンチョウゲ科アオガンピ属植物5種ついて新規抗HIV活性ジテルペノイドの探索を行った。 東邦大学薬学部付属薬草園にて栽培されたジンチョウゲ(Daphne odora)の枝より得られたメタノール抽出物について、各種クロマトグラフィーを用いて単離精製を行った結果、1種の新規ダフナン型ジテルペノイドを単離し、構造決定した。この新規成分はダフナン骨格にオルトエステル結合している脂肪族鎖にさらにクマリン(Daphnetin)が結合しており、これまでにないユニックな化学構造を有する。 一方、中国雲南省にて5種のアオガンピ属植物(Wikstroemia scytophylla, W. dolichantha, W. ligustrina, W. paniculate, W. lamatsoensis)を採取した。これら植物について、それぞれ95%エタノールにて抽出した。得られた抽出物について、各種カラムクロマトグラフィーおよび分取HPLCを用いて単離精製を行った。その結果、W. scytophyllaおよびW. lamatsoensisから新規化合物5種を含む計9種のチグリアン型ジテルペノイド、W. ligustrinaからは新規化合物1種を含む計5種のダフナン型ジテルペノイドを単離し構造決定した。一方、単離した化合物について抗HIV活性を評価したところ、チグリアン型ジテルペノイドdapholosericin Aは強い抗HIV活性を示した(IC50 3.8nM)。
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